孝明天皇御製:
> とやかくと今年もしばしいたづらにかひなく暮らす身の愚かさよ
> よろづごとなすにつけても愚かなり身はいやましに悔いの八千たび
> 位山たかきに登る身なれどもただ名ばかりぞ歎き尽きせじ
> とにかくに起きても寝ても思ふその歎きぞ絶えぬ我が身なりけり
おそらくは京都の市場の賑わいを詠んだ歌:
> 市場には年の暮れをば惜しまずもただ売り買ひの声ぞ賑はふ
> ゆたかなる世の賑はひも市人の春をむかふる年の暮れかも
> 商人の売るや重荷を三輪の市何をしるしに求めけるかも
> 売り買ひの賑はふ声も辰の市治まれる世を市に知るかな
年の暮れ:
> きのふけふと思ひし間にも明け暮れて今夜ばかりの年の内かな
> 嘆きつつ今年もやがて過ぐるなりいつまでかかる身に暮らすらむ
> 年の暮れ惜しむ心の梓弓ひきとまるべきものにしあらねど
> 今はとて何につけても惜しまるるむべ一年の暮れと思へば
> 人ごころ同じこよひの年の暮れその家々のさまは変はれど
寂しく静かな感じ:
> 春きぬと柳の糸はなびけどもくる人もなき宿のしづけさ
> おのづからくる人もなくなりにけり宿は蓬や生ひ茂りつつ
有馬温泉:
> 人ならず何の思ひか有馬山岩漏る水のわきかへるらむ
> いまもなほ世には出で湯に行く人の有馬の山の名にし負ふかな
遊女:
> いつとても柳の糸のうちなびく妹が姿の花のよそほひ
> もろともに身は河竹の起き伏しも飽かぬ乙女の姿なる見ゆ
> いつくとも宿も定めず明け暮れもうたふ江口の船の中かな
> 漕ぎ出でてゆききの人のうかれ妻身は浮舟の契りなるらむ
なんとなく京都の生活感が感じられるのだが。
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