式子内親王

> かへりこぬむかしを今とおもひ寝の夢の枕に匂ふ橘 (新古今 夏)

> たが垣根そこともしらぬ梅が香の夜半の枕になれにけるかな (新勅撰 春)

なんだかなあ。
夜寝ているとどこかから梅だか橘だかの匂いがしてきて、目が覚めたりするわけだよな。

> 窓ちかき竹の葉すさぶ風の音にいとどみじかきうたたねの夢 (新古今 夏)

これも同じ。匂いと音の違いはあるが、やはり寝ていて夢に昔を思い出しているというような歌。
面白いなあ。
ものすごく映像的な上に、匂いも音もある。五感のすべてを使っている。

誰を思い出しているかしらんが、
弟の以仁王だとして、1180年に死んでいるので、10年か20年以上前のことを思い出して詠んでいたのではないか、
と思われる。
ええっと。
以仁王は2才下の弟。
式子が31のときに死んでいる。
高倉天皇は10才下の弟。
やはり式子が32才の時に死んでいる。
弟たちが源平合戦に直接間接に巻き込まれてどんどん死んでいき、自分だけ生き残る。
父親の後白河法皇は43才のときに死んでいる(新古今選定よりも12年前)。
母親の藤原成子は28才のときに死んでいる。
本人は53才で死んでいる(新古今選定よりも3年前)。

20才まで賀茂神社の斎院。夫も子もいない。
藤原俊成に歌を習う。32才からは俊成の子の定家に習う。
定家、時に19才。
ふーむ。
やはり、30才過ぎてから本格的に歌を詠みだしたんじゃないかな。

> 見るままに冬は来にけり鴨のゐる入江のみぎはうす氷りつつ (新古今 冬)

鴨が居る入り江が水際からみるみる薄氷が張っていく。
鴨の居場所がなくなっていくはらはらした感じと、今まさに冬が到来したという季節感、臨場感。
まさに和歌のアニメーションだよな。

新古今舐めてたわ。

> 桐の葉もふみ分けがたくなりにけり必ず人を待つとならねど (新古今 秋)

我が家の庭に桐の葉が積もり積もって誰か訪ねて来てもどこをどう踏み分けて良いかわからないくらいになってしまった。
でも必ずしも誰かを待っているわけじゃないのよね。

なんか、ユーモアがきいてるよな。
もしかして喪女?
ていうか明らかに定家とは違う作風なんでは。

> 忘れめやあふひを草にひき結びかりねの野辺の露のあけぼの (新古今 夏)

いいねえ。青春だねえこれは。

返歌(京都上賀茂に十ヶ月ほど住み侍りし頃を思ひ出だして詠める)。

> 忘れめや賀茂の社の御薗橋渡り初めにし春雨の頃

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