思うに、諫早湾の干拓とか八つ場ダムなどが、他の公共事業より、マスコミにたたかれやすいのは、
およそ戦後まもなくに計画が立ち上がり、その着工が昭和末期であり、
未だに完成していないというパターンだからだ。
もし、この公共事業が、計画・着工・完成までに十年以内で起きていれば、
こんなに叩かれないだろう。
政治的判断というのは、実時間で行わなくてはならないから、
現在の基準で判断すると、間違っていたことは少なくないはず。
それは民間企業の経営判断と同じだ。
正しいか正しくないか迷っているヒマはないのであり、
結果的に、正しいことが間違っていることより多いとか、
損失より利益の方が多いというので、進めていくしかあるまい。
学問でも同じことで、三十年前の研究を今見れば間違いだらけなのは当たり前だ。
それでもし諫早湾にしろ八つ場ダムにしろ昭和四十年代くらいに完成していれば、
当時良くあった公共事業の例ということで、今更蒸し返されることもあるまい。
よほど揉めた成田空港ですら、既成事実化しつつあるのだから。
首都高にしろ江戸城外堀の埋め立てにしろ、
四国と本州の間の橋にしても、うみほたるにしても、
さっさと短期間でやってしまったから問題になりにくいのだ。
それに比べると新幹線とか高速道路はいつまでもだらだらやってるから叩かれやすい。
結局巧遅より拙速を尊ぶというだけのことだろう。
巧みでも遅いといつまでも叩かれる。叩かれ続け、叩かれる理由がどんどん増えていく。
これはまずい。
ドラマとかドキュメンタリーなどはどのようにでも作れるものだ。
そんなことは作ってる現場の人間なら誰でも知ってる。
おそらく同じプロデューサ、ディレクター、スタッフでまったく逆の視点で番組を作れる。
どちらの視点で作るかは単に視聴率次第というわけだ。
現在の視点で過去を裁くとか、若者の視点で旧システムを叩くとか、一番作りやすく受けやすいやり方だよ。
見てるがわのリテラシーの問題なのだろうけど。