亦不知其所終 田中久三 aka 田中紀峰のサイト。

Archive for the ‘マンガ’ Category

韃靼タイフーン

09.20.2017 · Posted in マンガ, 小説

安彦良和の『韃靼タイフーン』を読んでみてまず考えたのは、これほど優れた作品が世に知られていないからには、 私のような弱小作家の小説がまったく売れなくても当たり前だな、ということだった。 『韃靼タイフーン』が彼の他の作品と比べてものすごく優れているといいたいわけではない。 出来としては『王道の狗』『虹色のトロツキー』くらいだろうか。 最近の作品で比べれば、『麗島夢譚』や『天の血脈』よりはましな気がする。

『麗島夢譚』もほとんど知られていないが、『韃靼タイフーン』と同じ理由で、連載されている雑誌がマイナーだからだ。 『天の血脈』はアフタヌーンなのでまだメジャーといえる。

安彦良和は恐れずマイナーな雑誌に書きたいものを書く人だ。 逆の言い方をすると、書きたいものを書こうとしても企画会議を通らないから、そういうネタはマイナーな雑誌に回さざるを得ず、それゆえに世間に知られないということになる。

『ナムジ』や『神武』は強烈につまらない。 たぶん『アリオン』の流れでギリシャ神話から日本神話に飛び火したのだと思うが、彼には神話(というより、ファンタジー全般)を書く才能は無いと思う。

『ヴイナス戦記』のつまらなさにはあきれた。アマゾンでまとめてポチったが1巻目の最初のところで挫折してほってある。 たぶん彼にはSFの原作を書く才能も無いと思う。 『Cコート』は非常に面白い。『ヴイナス戦記』を書かせるために『Cコート』の連載を中断させたのだというが、まったく馬鹿げたことだ。なるほど読者は『ガンダム』の作画監督・キャラクターデザイナーが書いた宇宙戦記物が読みたいのだ。『クラッシャー・ジョウ』の挿絵を描いた安彦良和のオリジナル作品が見たいのだ。そして出版社はそれをアニメ化して当てたい。しかし彼にそんな才能はない。彼には『Cコート』を書かせるべきだったのだ。『ヴイナス戦記』に費やした労力は大いなる損失だ。 『韃靼タイフーン』もまた『ガンダムオリジン』を出すために中途半端に終わらせたというのだが、まったくもったいない話である。

『三河物語』は非常に面白いのにほぼ同じ時代を描いた『麗島夢譚』がつまらないのは意外な感じもするのだが、このあたりに安彦良和という人の限界があると思う。 ある程度史実に基づいて脚色したものは面白いのだが、史実から逸脱してほとんど空想だけで書いたものはつまらない。そう思うのは私だけだろうか?鄭成功と宮本武蔵を絡ませた話が面白いだろうか?荒唐無稽というべきだろう。 『韃靼タイフーン』も破綻寸前なのだが、なんとか帳尻あわせてある。

『ジャンヌ』もつまらない。なんなのだあのフルカラー書き下ろしは。よくもこんなくだらない企画を思いついたものだ。 どうも、メジャーなメディアからの頼まれ仕事ほど本人のやる気がなくてつまらなく、 マイナーなメディアで出したものほど本人のこだわりが濃厚で面白くなるのだ。 しかし世間様の評価というものは、作品の出来とはまったく何の相関もなく、 ただメジャーな媒体に出したものほど評価が高く、 マイナーな媒体に出した作品はほとんど認知されない。

安彦良和ほどの人ですらこのようなありさまなのだから、私のようなひよっこが世の中に正当に評価されるはずもない。 そう思ってずいぶん気楽になったし、これからも周りにあわせず自分の書きたいものだけを書いて遺そうと思った。 同時に、世間に媚びず、マーケティングもせずに読者を獲得することは恐ろしく困難なのだと思った。

安彦良和の本質は「右翼作家」なので現代の出版界では決して正当に評価されることはない。笑うべし。

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度胸星

08.20.2017 · Posted in マンガ

第1巻が無料で面白かったので、第4巻まで買って読んだのだが(最近マンガを買うのは珍しい)、 これはなあ。 作者の意に反して打ち切りになったというより、これ以上話を続けられなかったのじゃないかなあ。

まあ、面白いんだよ。でも、 地球では起きない超常現象が火星では起きることの説明が付かないよな。 付けられれば傑作と言えるかもしれないが、たぶんできなかったんだろうと思うよ、これは。 これじゃあ最後にどんな種明かしがくるかを知るためだけに金払った人は納得できないよ。

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機動戦士ガンダム THE Origin

08.28.2016 · Posted in マンガ

「機動戦士ガンダム THE Origin」なんだが、 comic-walker などで無料の試し読みが見れるので、読んでみたのだけど、 これはねえ。 安彦良和の悪いところが出てしまっているというか。 「王道の狗」「虹色のトロツキー」なんかは好きで読んだけど、 それとおなじノリをガンダムでやられると、正直つらいところがある。 「麗島夢譚」的なノリというか。

フラウボウとアムロ、ミライとブライトの関係なんかも見ててはがゆい。

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ヴイナス戦記

05.02.2014 · Posted in マンガ

「アリオン」「クルドの星」の続編だというので、 気になったのでアマゾンでポチって読んでみたが、 あまり面白そうではない。 どうも安彦良和が自分で書きたくてかいたストーリーではないと思うんだ。 たぶん、アニメ化、映画化するための原作として仕方なく書いた。 映画監督になるために自分が原作者になった。 そりゃそうだわな、「クルドの星」じゃアニメ化できんわな。 それで無理矢理SF仕立てにしたかんじだわ。

アニメ は、まあ、良く出来てはいるようだが。 だがこれは(CG使ってなかった頃の昭和の)メカの動きが面白いのであり、 キャラクターの作画が安彦良和である必然性がほとんどないわな。

やっぱ安彦良和で面白いのは「クルドの星」「王道の狗」「虹色のトロツキー」とか、 近代アジア史ものなわけだが。 異論はあるだろう(実際ここらが好きだという人を見たことがない)。 今連載している(らしい)「麗島夢譚」まで時代をさかのぼるとかなり変な癖が出て、 「神武」とかはもう全然つまらない。 不思議な人だわな。 要するにフィクションが下手な人だと思うんだ。 いや、フィクションにする元ネタがフィクションだとめろめろになってだめな人というべきか。 フィクションの元ネタが史実だったり近代だったりするとすっと一本筋が通って面白い、というか。

巨神ゴーグ。 出だしが「Cコート」っぽくて良い(笑)。 これぞまさしく純粋な動く安彦良和。 つか、「Cコート」アニメ化した方が絶対良いと思う、こんなロボットものより。 ロボットじゃないとスポンサー付かないんだなあ。 不毛だよな、安彦良和イコールガンダムという発想。 まあ入り口はガンダムで良いとして他にいろんなことをやらせてあげれば良かったのに。 で、安彦良和も最後は諦めて(開き直って)ガンダムオリジンとか描き始めたのな。 全く興味ないがな、ジ・オリジン。

安彦良和は、キャラが命の人なのだが、そこにガンダムテイストのSFを混ぜると、 肝心のキャラが死んでしまう。 「王道の狗」なんてほんとによくできた話で、 架空の人物、加納周助、風間一太郎のコンビはすごく良く出来てるし、 実在の陸奥宗光なんかも良くかけてる。 「虹色のトロツキー」も主人公の日本人とモンゴル人のハーフのウムボルトや、 その他の脇役ジャムツや麗花などの中国人も、 よく思いつくもんだと思う。 ていうか明らかに私が書いた「特務内親王遼子」なんてのは「虹色のトロツキー」の影響だしな。 東洋のマタハリとか(笑)。 近代アジア史物はもっと書きたいが、いろいろアレがアレなので書きにくいものはあるわな。

ま、私もいろんなジャンルを書き散らすほうではあるが、 安彦良和の統一感のなさははんぱない。

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酒のほそ道

03.14.2014 · Posted in マンガ

風邪引いてだるいので気を紛らすため、例によって駄文を書くことにする。 私はこの、『酒のほそ道』の主人公の岩間宗達のキャラ設定が不思議で仕方なかった。 居酒屋や寿司屋を食べ歩き、飲み歩くばかりではなく、 一人で家で晩酌したり、山登りして景色を眺めながら飲んだりする。 年は29歳、独身。 恋人未満の女友達がいる。

自分もそうだったが、 普通に仕事していて独身の男で飲み歩きが好きならば、 自宅で一人で晩酌するなどもったいない、一軒でも多くの店を開拓したいと思うのではなかろうか。 またたった一人で旅行して酒を飲んだりするというのが解せない。

でまあ今回この第三巻を読んでみて思ったのだが、 作者のラズウェル細木という人は、すでに嫁がいて子供がいる人なのである。 妻子持ちならば、一人で酒を飲みたくなることは十分ある。 つまみは缶詰でたった一人の晩酌でもいいから飲みたいというのは人間関係から逃れたいから。 とにかく家庭や仕事、妻子から逃げ出して一人きりになりたいのだ。 その自分を独身男性に投影するからキャラがなんか不思議なことになっているんじゃないか。

ラズウェル細木自身はメタボでもなくハンサムな男だそうで (追記。つか、youtubeに露出してるじゃんか。 ハンサムかどうかはともかく、痩せてるな)、 だからこそ彼は、メタボで独身でどちらかと言えば三枚目で、 独り飲みが好きな架空の男を作り出したのだろう、という結論に達した。 彼はアシスタントの女性と結婚して離婚している。育児マンガも描いている。 離婚した妻は今もアシスタントとして働いているという。 独りで飲み歩きたい気持ちが伝わってくるよなあ。

というかもともと自分とはまったく別のキャラを描こうとしたのだが、 キャラというのは自然と自分に似てきてしまうので、 連載しているうちにあんなふうになってしまったのかもしれん。

元妻のブログ というものもある。

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ディエンビエンフー

03.13.2014 · Posted in マンガ

タイトルが『ディエンビエンフー』でなければこの漫画を読むことはなかったと思う。 作中にも書いてあるが、ディエンビエンフーは厳密にいえばベトナム戦争ではない。 しかし普通の人は(私も含めて)ディエンビエンフーと言えばベトナム戦争を連想するだろう。 あるいは、ベトナム戦争の前史であるインドシナ戦争の話を期待するのではなかろうか。

ベトナム戦争を表層的ではなく扱っているという意味では悪くないアプローチだと思う。 これよりも浅い戦争漫画ならいくらでもありそうだ。

美少女のヒロインが出てくるところが若干漫画だ。 そこは既定路線だと納得できれば抵抗なく(いや、あるが)読めるのかもしれん。

ふと思ったのだが、戦記ものというのは、 戦略的には比較的忠実に歴史をなぞり王道を行きつつも、 戦術的部分、つまりディテイルはかなり脚色してラノベ化するのはアリなのかもしれん。 cat shit oneもある意味そうだ。 その逆はたぶん読むに堪えないのではないか。

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鬱ごはん

03.13.2014 · Posted in マンガ

面白い。それはさておき、 ここに出てくる食事というのは、すべて、 ファミレスだったり、コンビニ弁当だったり、回転寿司だったり、 ハンバーガーだったり、牛丼屋だったりピザだったりインスタント食品だったりする。 そして酒は出てこない。 タバコは一瞬出てくるのに酒がでない。 私の小説とはどっこもかぶってないところが逆に面白いといえば面白い。

そして、ファストフードは一通り出てきて、かつ、 そばの話は二度も出てくるくせに、富士そばなどの立ち食いソバの話が一切でない。 これもある意味象徴的だ。

まあ、たぶん、酒を飲むやつと飲まないやつの違いだろうな。 ラズウェル細木だと絶対こうはならんもんな。

食い物の話は好きなくせに、 なぜ今までこういうのを書こうという気が一度もおこらなかったのかというのを自問自答している。 たぶん自分が20代なら必然的にこうなったのかもしれない。 じゃあ50近くのおっさんがファミレスやチェーンの居酒屋や牛丼屋の話を書けばどうなるんだろうか。 謎だ。 矢口高雄が渋谷や原宿の話を描くくらい何かが違う。

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憑依

02.10.2014 · Posted in マンガ

いがらしみきおのアイの主人公は他人と意識を共有することができるのだが、 手塚治虫のブッダに出てくるタッタという子供も動物に乗り移ることができる。 賤民の子供で無教養だから超能力を身に付けたという設定も似ている。

人に狐や狸が憑くという話は普通だしな。 生き霊や死んだ人や神が憑いて物語るというのも普通だわな。 自分から相手に乗り移るというのも自然とそこから出てくる話かもしれん。 こういう怪奇譚はしかしどういう起源を持つのだろうか。

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俺はまだ本気出してないだけ

11.18.2013 · Posted in マンガ

引っ越しのときに紙の本はほとんど捨ててしまって「俺はまだ本気出してないだけ」もどこまで読んだかすら忘れていたが、 アマゾンのおすすめ商品で教えられて5巻目を買ってみたのだが、 まったく読んでなかったので、5巻目を買ってない上にIKKIの連載もまったく読んでないわけだった。 そりゃそうだな。最近は漫画雑誌を一切読まなくなったから。

それでアマゾンのカスタマレビューなんか読んでると、感動して泣いたというやつがいる一方、 5巻は今までと違ってまるでつまらなかったという人もいる。 別につまらなくもなかったが意外性も少なく地味な話だし、4巻までがおもしろかったというのは確かだと思う。

最初のもちこみの担当者が人生300年に感動してオカマになり、 次の担当者が女で一転作品を酷評して落ちこむ、あたりまでがおもしろかったといえばおもしろかった。

以前、青野春秋の謎 というものを書いたのだが、この作家は、単行本にかなり暗くてシュールな若者の葛藤みたいな短編をいくつも載せていた。 従って、5巻がそっちのほうに引っ張られて暗くて地味な話になったのは予測できなかったわけでもない。

で今は「五反田物語」などという、自伝なのか私小説なのかしらんが、さらに悩める若者的なものを書いているらしい、読んでないからしらんが。

でまあ青野春秋という人が男性か女性かは不明で年齢も不詳で、未だに極めて謎なひとなわけで、 新人賞を取った作品というのも入手困難なのでよくわからんわけだが、 どちらかといえば、少女漫画、というか女性作家が書くような純文学に近いものを書くひとなのだろうと思う。 で、編集からなんか軽いギャグ漫画でもかいてみるかと言われて書き始めたら異様に人気がでてしまったのだが、 この企画というかアイディアは本人というよりは編集の人のものではなかったろうか。 或いはシズオは編集の人が担当した誰かのことだったかもしれない(アシスタント時代の同僚とか、持ち込み仲間の一人かもしれんわな)。

でまあ、この本を買うとアマゾンのおすすめに「最強伝説 黒沢」とかが出てくるんだけど、 シズオは福本伸行や古谷実が描くような人物ではまったくないし、 苦役列車的な人物でもないし、 それらと比較してもしょうがないし(1巻のレビューにはそんなのが多かったが)、 そもそも作者はそんなものと比較されてもうれしくもなんともないと思う。

まあシズオを読んでたのは私も小説を書き始めて新人賞に応募してたころだったので、新人賞の仕組みとかよくわかりました。 ようは新人賞は若者しかとらない。 右も左もわからん未成熟な新人を出版社が都合の良いように育てて恩を売る仕組みになっている。 それは正社員という形で若者を搾取する日本の会社と同じだし、 政治の世界もそうだし、 ともかく新人は未完成でなくてはならない。 編集やライターは表にはでてこないで実を取る。 写真家とか絵本作家とかほとんど99%まではそう。 実力者を中途採用すれば本人にだけメリットがあり、会社や担当の旨味は少ない。 日本の社会は結局そんなふうにできている。 なんのことはない、夏目漱石の「坑夫」に出てくる飯場の搾取の構図と何も変わっちゃいない。 牢名主がいて、新入りがいる世界だ。

たまにほんとにすごいやつもいるが、それも本人の才能というよりは、偶然おもしろいネタに遭遇したというだけであって、 ま、ほとんどは運みたいなもんじゃないかな。 一万人とか百万人の人が地面掘り返してりゃ一人くらいは鉱脈にぶち当たる、そんなものであり、 一生懸命地面掘りゃいいって話ではない。

で、作者は、最後は編集にもらったネタは捨てて(そりゃそうだろう。これからもシズオみたいなマンガを死ぬまで描き続けるわけにはいかない)、本人が書きたいような漫画を書いて、本人の好きな終わらせ方をした。 事実は、作者と編集の合作だったわけだから、その編集の部分を切り捨てるとあの5巻のようなストーリーにならざるを得ない。 いつまでもヘタウマなわけでもなく、ずいぶん画力はついてきたのに、いつまでもヘタウマな絵でシズオを描き続けるのは苦痛だっただろうと思う。 そうすると4巻までの愛読者は引く。 逆にお涙ちょうだいな人情話が好きな連中には5巻だけ受けた。 そういうことではないかね。

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cat shit one vol. 1

08.30.2013 · Posted in マンガ

cat shit one を読み終えた。 シリーズ化第一巻だけあって非常に読み応えがある。 そのへんの凡百のベトナム戦記ものよりためになるだろう。

インドシナ史の入門書として読むのもありかもしれない。

cat shit one の前に dog shit one という劇画調の漫画があっって、 月刊コンバットマガジンという雑誌に連載され、 それも収録されているのだが、 正直大しておもしろくない。 アメリカ兵がウサギでベトナム兵がネコという意外性がなければ、 ミリオタではない私がこれを目にすることはなかったと思う。

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