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新撰和歌 巻第一 春・秋 荓百二十首

05.17.2016 · Posted in 新撰和歌

1 袖ひちて むすびしみづの こほれるを 春たつけふの 風やとくらむ

古今2 「はるたちける日よめる」貫之

2 秋きぬと めにはさやかに みえねども かぜの音にぞ おどろかれぬる

古今169「秋立つ日よめる」敏行

3 春がすみ たたるやいづこ みよしのの よし野の山に 雪はふりつつ

古今3 題知らず、読み人知らず

4 わぎも子が ころものすそを ふきかへし うらめづらしき 秋の初かぜ

古今171 題知らず、読み人知らず。「わぎもこ」→「わがせこ」

5 春ごとに かずへこしまに ひとともに おいぞしにける みねの若松

素性集、春とのみかぞへこしまにひとともにおいぞしにけるきしのひめまつ

6 きのふこそ さなへとりしか いつのまに いなばもそよと 秋かぜのふく

古今172 「いなばもそよと」→「いなばそよぎて」

7 とふ人も なきやどなれど くる春は 八重むぐらにも さはらざりけり

新勅撰8、古今和歌六帖1306、貫之集207

8 萩の葉の そよぐおとこそ 秋かぜの 人に知らるる はじめなりけれ

拾遺集139「延喜御時御屏風に」、古今和歌六帖3716、また3717 凡河内躬恒 をぎのはにふきくるかぜぞ秋きぬと人にしらるるしるしなりけれ

9 梅の花 にほふはるべは くらぶ山 やみにこゆれど しるくぞ有りける

古今39「くらぶ山にてよめる」貫之

10 いづれとも 時はわかねど 秋の夜ぞ 物思ふことの かぎりなりける

古今189「これさだのみこの家の歌合のうた」読人不知、小町集、宗于集

11 ときはなる まつのみどりも 春くれば 今ひとしほの 色まさりけり

古今24「寛平御時きさいの宮の歌合によめる」源宗于

12 紅葉せぬ ときはの山は ふくかぜの おとにや秋を ききわたるらむ

古今251 「秋の歌合しける時によめる」紀淑望

13 春やとき 花やおそきと ききわかむ 鴬だにも なかずも有るかな

14 こひこひて あふ夜はこよひ あまの川 きり立ちわたり あけずもあらなむ

15 花の香を かぜのたよりに たぐへてぞ 鴬さそふ しるべにはやる

16 こよひこむ 人にはあはじ たなばたの ひさしきほどに あへもこそすれ

17 雪のうちに 春はきにけり 鴬の こほれるなみだ いまやとくらむ

18 あきかぜに 夜のふけゆけば 天の川 かはせになみの たちゐこそまて

19 梅がえに きゐる鴬 はるかけて なけどもいまだ 雪はふりつつ

20 ちぎりけむ 心ぞつらき 七夕の としにひとたび あふはあふかは

21 春の夜の やみはあやなし むめの花 色こそみえね 香やはかくるる

22 としごとに あふとはすれど 七夕の ぬる夜のかずぞ すくなかりける

23 春たてば わかなつまむと しめし野に きのふもけふも 雪はふりつつ

24 木のまより おちくる月の 影みれば 心づくしの 秋はきにけり

25 かすが野の とぶひののもり いでて見よ いまいくかありて わかなつみてむ

26 うつろはむ ことだにをしき 秋はぎに をれぬばかりも おける白露

27 あづさ弓 おしてはるさめ けふふりぬ あすさへふらば わかなつみてむ

28 夜をさむみ ころもかりがね なくなへに はぎの下葉も 色づきにけり

29 君がため 春の野にいでて わかなつむ 我が衣手に 雪はふりつつ

30 わがために くるあきにしも あらなくに 虫の音きけば まづぞかなしき

31 春日野の わかなつみにや しろたへの 袖ふりはへて 人の行くらむ

32 秋の野に みちもまどひぬ 松むしの こゑするかたに やどやからまし

33 わがせこが ころも春雨 ふるごとに 野辺のみどりや 色まさりける

34 日ぐらしの なくやまざとの 夕ぐれは かぜよりほかに とふ人もなし

35 春がすみ たつをみすてて 行くかりは はななきさとに すみやならへる

36 春がすみ かすみていにし かりがねは いまぞなくなる 秋ぎりのうへに

37 ことしより 春しりそむる さくら花 ちるといふことは ならはざらなむ

38 秋はぎの 下葉いろづく けふよりや ひとりある人の いねがてにする

39 さくらばな さきにけらしな 足引の 山のかひより 見ゆる白雲

40 あきの露 うつしなればや みづ鳥の あをばのやまの うつろひぬらむ

41 みよし野の やまべにたてる さくら花 白雲とのみ あやまたれつつ

42 白雲の なかにまぎれて 行く雁の こゑはとほくも かくれざりけり

43 山たかみ くもゐに見ゆる さくら花 こころのゆきて をらぬ日ぞなき

44 白雲に はねうちかはし とぶかりの かげさへ見ゆる 秋の夜の月

45 山ざくら わが見にくれば はるがすみ みねにも尾にも たちかくしつつ

46 たがために にしきなればか 秋ぎりの さほの山辺を たちかくすらむ

47 見てのみや 人にかたらむ 山ざくら 手ごとにをりて いへづとにせむ

48 やまのはに おれるにしきを たちながら 見てゆきすぎむ ことぞくやしき

49 見る人も なき山里の さくら花 ほかのちりなむ のちぞさかまし

50 玉かづら かづらき山の もみぢ葉は おもかげにこそ みえわたりけれ

51 見わたせば やなぎさくらを こきまぜて みやこぞ春の にしきなりける

52 おなじえに わきてこの葉の うつろふは にしこそ秋の はじめなりけれ

53 さくら花 しづくにわが身 いざぬれむ かごめにさそふ かぜのこぬまに

54 ちはやぶる かみなび山の もみぢ葉は 思ひはかけじ うつろふものを

55 花の色は かすみにこめて 見せずとも 香をだにぬすめ 春の山かぜ

56 こひしくは 見てもしのばむ もみぢ葉を ふきなちらしそ 山おろしのかぜ

57 いざけふは はるの山辺に まじりなむ くれなばなげの 花のかげかは

58 かみなびの みむろの山を 秋ゆけば にしきたちきる ここちこそすれ

59 あさみどり いとよりかけて しら露を たまにもぬける 春のやなぎか

60 さをしかの あさたつをのの 秋はぎに たまと見るまで おける白露

61 青柳の いとよりかくる はるしもぞ みだれてはなの ほころびにける

62 いもがひも とくとむすぶと たつた山 いまぞもみぢの 色まさりける

63 古郷と なりにしならの みやこにも いろはかはらで 花ぞさきける

64 久かたの 月のかつらも あきはなほ もみぢすればや てりまさるらむ

65 さくら色に ころもはふかく そめてきむ はなのちりなむ のちのかたみに

66 あめふれば かさとり山の もみぢ葉は ゆきかふ人の そでさへぞてる

67 桜いろに まさるいろなき 花なれば あたらくさ木も ものならなくに

68 しら露の 色はひとつを いかなれば あきの木の葉を ちぢにそむらむ

69 世の中に たえてさくらの なかりせば 春のこころは のどけからまし

70 さほやまの ははそのもみぢ ちりぬべみ 夜さへ見よと てらす月かげ

71 さくら花 ちらばちらなむ ちらずとて 古郷人の きても見なくに

72 をみなへし おほかる野辺に やどりせば あやなくあだの 名をやたちなむ

73 春のきる かすみのころも ぬきをうすみ やまかぜにこそ みだるべらなれ

74 しものたて 露のぬきこそ もろからし やまのにしきの おればかつちる

75 をしと思ふ 心はいとに よられなむ ちるはなごとに ぬきてとどめむ

76 秋の野に おくしら露は たまなれや つらぬきかくる 雲の糸すぢ

77 ちる花の なくにしとまる ものならば われ鴬に おとらざらまし

78 たつた川 もみぢ葉ながす かみなびの みむろの山に あられふるなり

79 こまなめて いざ見にゆかむ 古郷は ゆきとのみこそ 花はちるらめ

80 秋ならで あふことかたき 女郎花 あまのかはらに たたぬものゆゑ

81 さくらちる 木のしたかぜは さむからで 空にしられぬ 雪ぞふりける

82 見る人も なくてちりぬる おく山の もみぢは夜の にしきなりけり

83 ゆく水に みだれてちれる さくら花 きえずながるる 雪とみえつつ

84 浪かけて 見るよしもがな わたつうみの 沖のたまもも 紅葉ちるやと

85 桜花 ちりぬるかぜの なごりには みづなきそらに なみぞたちける

86 我がきつる かたもしられず くらぶ山 きぎの木のはの 散るとまがふに

87 さくら花 みかさの山の かげしあらば ゆきとふるとも いかにぬれめや

88 なきわたる かりのなみだや おちつらむ ものおもふやどの うへの白雲

89 春ごとに ながるる川を 花とみて をられぬ水に 袖やぬれけむ

90 山川に 風のかけたる しがらみは ながれもやらぬ もみぢなりけり

91 としふれば よはひはおひぬ しかはあれど 花をしみれば もの思ひなし

92 をり人の こすのまにまふ 藤ばかま むべもいろこく ほころびにけり

93 かはづなく かみなび山に かげみえて いまやさくらむ やまぶきの花

94 ぬれてほす 山路の菊の 露のまに いつかちとせを 我はきにけむ

95 はるさめに にほへるいろも あかなくに 香さへなつかし 山吹の花

96 露ながら をりてかざさむ 菊の花 おいせぬ秋の ひさしかるべく

97 をりても見 をらずてもみむ みなせ河 みなそこかけて さける山吹

98 あきかぜの ふきあげにたてる 白菊は 花かなみだか 色こそわかね

99 かはづなく 井手の山ぶき さきにけり あはましものを 花のさかりに

100 心あてに をらばやをらむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花

101 よし野がは きしの山ぶき 吹くかぜに そこのかげさへ うつろひにけり

102 秋をおきて ときこそ有りけれ 菊の花 うつろふからに 色のまされる

103 わがやどに さけるふぢなみ たちかへり すぎがてにのみ 人の見るらむ

104 さきそめし やどしわかねば 菊の花 たびながらこそ にほふべらなれ

異本歌、咲きそめし時より後はうちはへて世は春なれや色の常なる

105 よそに見て かへらむ人に ふぢのはな はひまとはれよ えだをはるとも

106 きても見む 人のためにと おもはずは たれかからまし 我が宿のくさ

107 みどりなる まつにかけたる 藤なれど おのがこころと 花はさきける

108 一もとと おもひしものを ひろ沢の 池のそこにも たれかうゑけむ

109 花のちる ことやかなしき 春がすみ 立田の山の うぐひすのこゑ

110 色かはる 秋のくるをば ひととせに ふたたびにほふ 花かとぞ見る

111 さくがうへに ちりもまがふか 桜花 かくてぞこぞも 春は暮れにし

112 もみぢ葉を そでにこきいれて もてでなむ 秋をかぎりと 見む人のため

113 さくらちる はるの心は はるながら 雪ぞふりつつ きえがてにする

114 紅葉ばの ながれてとまる みなとには くれなゐふかき 浪やたつらむ

115 花もみな ちりぬるのちは ゆくはるの 古郷とこそ なりぬべらなれ

116 みちしらば たづねもいなむ 紅葉ばを ぬさとたむけて 秋はいにけり

117 年ごとに なきてもなにぞ よぶこ鳥 よぶにとまれる 花ならなくに

118 立田川 もみぢながれて ながるめり わたらばにしき なかやたえなむ

119 声たえで なけや鴬 ひととせに ふたたびとだに くべき春かは

120 ゆふづく夜 をぐらの山に なくしかの こゑのうちにや 秋はくるらむ

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