私の場合読者から感想を聞けることがほとんどないのだが、たまたま「安藤レイ」を読んだという人に話を聞いたら、結局人間の女よりアンドロイドが良いって話でしょとか言われて、違うよそれ全然読み間違ってるよとかいうと、世の中にはいろんな読み方をする人がいるのよとか逆に言われて、まあそういうものなのかもしれないな、こまかいところまで読む人はいないかもしれないなと思った。
世の中にはアンドロイドとはこういうもんだという先入観があり、アンドロイドと男と女とはこういうものだという観念があって、それを裏切るような書き方をしても、ざっと読んだ人には自分の思い込みの通りに書かれているとしか見えないのだろう。それはそれで面白い現象だ。なぜかというと私の書いたものはたいてい読者の観念を裏切るようにできているからだ。
世の中の大塩平八郎のイメージとか。アルプスの少女のイメージとか。そんなものを利用しながらまったく違うものを書いている。人の予測の裏をかく、そこが売りなはずなのだが、しかし、世の中の人がざっと読んだだけでは違いがわからんということになろう。
古典とかロングセラーとかベストセラーというものはたくさんの人に読まれるから世の中に固定観念というものを植え付ける力を持っている。それはすごいことなのだ。いいかわるいかはともかく。