永井荷風『つゆのあとさき』だが、文字数を調べてみると150枚程度で、さほど長くもない小説だが、
とにかく内容の割に登場人物が無駄に多いというか、だらだらしてて読みにくい。
当時のカフェの風俗をそのまま記した体験記もしくは資料としては面白いのかもしれん。
そして、ちょっとした落ちも付けてあるようなのだが、受刑者が出獄して遺書を残して自殺するという、
まあ、あまり必然性があるとも思えない落ちだ。
つまり主人公の君江という女についてだらだらと書いたことと落ちとがほとんど何の脈絡もない。
伏線にすらなってない。
清岡の辺りに永井荷風本人が投映されているのだろう。
『墨東綺譚』の作者贅言部分を除いた箇所の約二倍ほどの分量だろうか。
『墨東綺譚』が昭和12年、
『つゆのあとさき』が昭和6年だからそれほど離れてない。
どちらも50歳から60歳頃に書いたものだな。
『墨東綺譚』の方が登場人物が少ないのと長さが短いのと、
同じことだがストーリーが単純明快なのと、
落ちがわりとあっさりして比較的無理が無いので読みやすいし面白いと思う。
ただ、どちらの作品も、落ちに必然性がないというか無理がある感じ、
というか他の部分と違って明らかに嘘をついているというか作り話を付け足した感じで、
無理矢理小説という体裁をとろうとしている感じがどうしてもしてしまう。
たぶん実録でもなんでも良いのではなかろうか。
そうすると私小説になってしまってそれが嫌だったのかもしれんが。
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