「アリオン」「クルドの星」の続編だというので、気になったのでアマゾンでポチって読んでみたが、あまり面白そうではない。どうも安彦良和が自分で書きたくてかいたストーリーではないと思うんだ。たぶん、アニメ化、映画化するための原作として仕方なく書いた。映画監督になるために自分が原作者になった。そりゃそうだわな、「クルドの星」じゃアニメ化できんわな。それで無理矢理SF仕立てにしたかんじだわ。
アニメは、まあ、良く出来てはいるようだが。だがこれは(CG使ってなかった頃の昭和の)メカの動きが面白いのであり、キャラクターの作画が安彦良和である必然性がほとんどないわな。
やっぱ安彦良和で面白いのは「クルドの星」「王道の狗」「虹色のトロツキー」とか、近代アジア史ものなわけだが。異論はあるだろう(実際ここらが好きだという人を見たことがない)。今連載している(らしい)「麗島夢譚」まで時代をさかのぼるとかなり変な癖が出て、「神武」とかはもう全然つまらない。不思議な人だわな。要するにフィクションが下手な人だと思うんだ。いや、フィクションにする元ネタがフィクションだとめろめろになってだめな人というべきか。フィクションの元ネタが史実だったり近代だったりするとすっと一本筋が通って面白い、というか。「三河物語」もまあまあ面白い。これも大久保彦左衛門という原作者の強い個性がうまく安彦良和を制御できている感じ。「アレクサンドロス」も見たが、これはもう安彦良和自身が言っているように完全な企画倒れ。そう簡単に描けるわけがないんだよな、アレクサンドロスを。老臣パルメニオンを妙に持ち上げていたあたりが少しおもしろい。
巨神ゴーグ。出だしが「Cコート」っぽくて良い(笑)。これぞまさしく純粋な動く安彦良和。つか、「Cコート」アニメ化した方が絶対良いと思う、こんなロボットものより。ロボットじゃないとスポンサー付かないんだなあ。不毛だよな、安彦良和イコールガンダムという発想。まあ入り口はガンダムで良いとして他にいろんなことをやらせてあげれば良かったのに。で、安彦良和も最後は諦めて(開き直って)ガンダムオリジンとか描き始めたのな。全く興味ないがな、ジ・オリジン。
安彦良和は、キャラが命の人なのだが、そこにガンダムテイストのSFを混ぜると、肝心のキャラが死んでしまう。「王道の狗」なんてほんとによくできた話で、架空の人物、加納周助、風間一太郎のコンビはすごく良く出来てるし、実在の陸奥宗光なんかも良くかけてる。「虹色のトロツキー」も主人公の日本人とモンゴル人のハーフのウムボルトや、その他の脇役ジャムツや麗花などの中国人も、よく思いつくもんだと思う。ていうか明らかに私が書いた「特務内親王遼子」なんてのは「虹色のトロツキー」の影響だしな。東洋のマタハリとか(笑)。近代アジア史物はもっと書きたいが、いろいろアレがアレなので書きにくいものはあるわな。
ま、私もいろんなジャンルを書き散らすほうではあるが、安彦良和の統一感のなさははんぱない。