或老人之歎歌一首並反歌四首

投稿者: | 2015年10月7日

我が書きし ふみのかずかず 我が詠みし 歌のかずかず

うつせみの うつし人にて あらむ間に 残しおかむと

たくめども ときのまにまに いそとせは むなしくすぎて

身とともに 心も老いて あたらしき 思ひも出で来ず めづらしき ものも見出でず

名をのこす 人はさはにあれ かなしくも 我はさにあらで

なにはえの うもれぎとなり 後の世の 人にわすられ

いまさらに 何をか残さむ ことさらに 何をかうたはむ このうつし世に

反歌

うつし世に 見るべきものは すべて見つ 詠むべき歌も 詠みや果てつる

うつし世の 人はたのまじ ただ神と のちの人にぞ 歌は詠むべき

あきらけく をさまりし世の おほ君に 学びしならひ 忘るべしやは

しぬまでの よはひにかへて のこさまし わがかきしふみ わがよみしうた

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