『虚構の歌人』を改めて読み直してみたが、これはもうね、書いては削り、書いては削りで、
最初は百人一首の謎みたいな話だったのが藤原定家伝みたいなものになり、
それから定家と禅みたいな話になりそうになり、
さらに承久の乱とか北条泰時の話が書きたくなり、
それじゃまとまらないからとざっくり消して「小さくまとめた」結果なのだが、
組み版がInDesignではなくてIllustratorだったので死ぬほど苦しんだし。
ルビとかどんどん勝手に変えられてしまうので困った。
そう、藤原定家伝+歌論を書こうということに企画会議ではまとまっているのに、
私がそれ以外のものもあれこれ書きたがり、まとめきれなかったのが最大の問題。
『虚構の歌人』は、まあ紙の本で初産だったから仕方ないと思って読んでもらうしかない。
いたるところで破綻し分断しててしかも直しようがない。
「ユニーク」な本ではあるよな。
「奇書」のたぐい。
部分的にはよくまとまっているところもあるが、全体としてきわめて記述不足で、
分かる人にはわかるかもしれないが、
普通の人には何を言ってるんだろうこの人みたいな文章になっちゃってると思う。
まあ、書き直す機会を与えてもらえるのならば一生かけて書き直したい。
『定家の禅』と『承久の乱』は書きたいネタだ。
重源、栄西、泰時、面白いネタだ。
それに比べると今度出るシュピリ初期作品集なんかは、うまい具合の長さにまとまってるし、
解説がかなり長めだが、
それもまあ必要だからその長さになっているともいえる。
完成度は高いと思う。
シュピリの他の作品を読んでいくうちに書き直したくなる箇所が出てくるかもしれないが、
まあこれはこれでおしまいにして良い気がする。
精神衛生的には良くできた本だ。
ただまあこれを一般読者が読んで面白いかというとどうだろう。
定家に比べれば簡単だから読めるが内容が暗すぎて宗教的すぎて読むのがかなり辛いと思う。
そこを我慢して読める人には面白いだろうと思う。