また久しぶりに浅草に戻ってきた。昨年末に部屋を借りたので四ヶ月弱が経った。今の気分はまさに
などやかく 楽しかるらむ 浅草は 生まれ育ちし 町にはあらねど
と言ったところであり、浅草は飽きたな嫌だなと思うこともあるが、しばらくぶりに訪れると何か言いようのない、自分の心のどこから湧いてくるのか、実にうきうきした気分になる。江戸時代から続くモメンタムとしか言いようがない。そういう町は今や東京には浅草以外にはないのである。
浅草に久しぶりに戻ってくるとついハシゴをしすぎてしまう。これがよろしくない。ハシゴはできれば二軒まで、三軒までを限度にしたい。四軒目には絶対行かないようにせねば。それで午前三時くらいにはアルコールが抜けきって、午前五時くらいからは普通に生活できる程度に留めるのが良い。
昨日も新御徒町の例の店に行ったのだが93才のおじいさんが地下鉄を乗り継いで新御徒町まで来て、日本酒を二杯も飲んで、周りが心配して、チェイサーで水も飲んだほうが良いですと水を飲ませてあげたりなどしていたのだが、本人はいたって丈夫で、持病もないという。都営にはシルバーパスというものがあって無料だが、営団は有料なので、都営だけ乗り継いでくるので遠回りだなどと言っていたが、ずいぶんと元気な人だ。その人が昔、上皇と友達で(友達の友達だったかもしれん)、昭和天皇の写真を撮ったことがあり、写真屋がそのネガを買い取りたいというので今の価値で20万円くらいで売って儲かった、などという話をしていたのだが、今もし昭和天皇が白馬にまたがった写真のネガがあったらどんだけ価値があるかしれない。20万円では絶対済まないだろう。
梅干しや沢庵を買うことは非常に難しい。昔ながらに漬けた梅干しというものにもいろんなものがあるが、塩の結晶が析出するくらい塩をぶちこんだものなどがあり、いくらなんでもこれでは嫌味である。梅と塩だけで昔ながらの製法で作った梅干しであって、かつ、現代風に多少塩分を少なくすることも十分できるだろうと思うのだ。古漬けとか浅漬けのような変化を持たせることもできると思う。
でこの嫌味なまでに塩辛い梅干しだが、納豆と混ぜて食べると適度においしいことがわかった。たとえばおかめ納豆などは納豆のたれが付いてくるがこのたれを使わずに、塩気は梅干しからとる、というような。