鬼平の第1話は「唖の十蔵」でこの回はまだ火付盗賊改方長官の長谷川平蔵と妻の久栄、与力筆頭の佐嶋忠介、そしてのちに密偵となる粂八くらいしかでてこない。ほかにはこの話にしか出て来ない同心の小野十蔵が出るくらい。初回らしく非常にシンプルな話である。
第2話の「本所・桜屋敷」では彦十と岸井左馬之助が出てくる。ほかには酒井祐助、竹内孫四郎、小柳安五郎という同心が出てくるが竹内は後の話では自然消滅してしまう。
ところが新しいテレビドラマの「本所・桜屋敷」ではいきなり主要登場人物が勢揃いでそのうえゲスト出演で松平健まで出てきて、平蔵と松平健の対決まで盛り込んでいるから、これだけ誰も彼も出演させて、ゲストのメンツも立てて、その上昔と今と二人一役やらせて、そういう条件付きで一話に全部盛り込めと言われた脚本家はさぞかし苦労しただろうと思う。これを見させられるほうも迷惑で、少なくとも私にとっては大迷惑だった。ストーリーは二の次で制限時間内に俳優を並べるだけで精一杯だっただろう。最初は少ないキャストで、だんだんに増やしていけばもっと話も作りやすかっただろうと思う。私も歴史小説など書いていて思うが、こういう説明的、前振り的、紹介的な書き出しは決してやってはならぬと思っている。いつの間にか自然と話の世界に入り込んでいたというような導入が最善だと思うが、テレビドラマではそうもいかないんだろう。
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