へレースポントス

『エウドキア』に「ヘーレスポントス」と書いていたのは「へレースポントス」の間違いだった。
修正せねばならない。
へレースポントスは海峡に名付けられた名ではなく、あの細長い海に付けられた名のようである。
意味はずばり「ギリシャの海」。
ヘラス、ヘレニズム、ヘレニカなどはすべてギリシャ人が自分らの国や言語のことを言う言葉だ。
つまりへレースポントスという名は、ギリシャ人にとって非常に重大な意味を持っている。

黒海は単にポントスと呼ばれたらしい。
ポントスとへレースポントスの間の海がプロポンティスだが、
これはポントスの手前の海と解釈できる。
へレースポントスからプロポンティスを経てポントスに入る、というニュアンスがそこにはある。

もっと細かく言えば、
ボスポラス海峡は紛れもなく海峡である。
プロポンティス海は海である。
そして、へレースポントス海峡は、海峡ではなくて、
古代ギリシャ人の感覚では、へレースポントス海と呼ぶべきだろう。

ではエーゲ海はなんと呼ばれていたかというと、この海はエーゲオペラーゴあるいはアルキペラーゴと言って、ポントスではない。
ギリシャ語で「海」をペラーゴといったりポントスと言ったりするわけだが、
もとは両方とも固有名詞であったか。
あるいはポントスだけが固有名詞だったか。
どういう使い分けか、よく分からない。
ギリシャ人がいつから自分たちのことをヘラスとかヘレニカと言い出したのだろうか。
その中心的な部族や土地はどこだったのだろう。

いやはや。しかし、昔書いたものを手直しすることの大変さと言ったら。

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