フロイトの集大成

フロイトというのは、いわゆる一種の奇人・変人のたぐいであると思う。ディオゲネスやニーチェを哲学者というのと同じ意味でフロイトを哲学者というのは当たってるかもしれない(どんな人間を哲学者というべきかを私は知らない)。
しかし、マックス・ウェーバーのような意味でフロイトを学者と言うのはどうかと思う。
しかし、アトン信仰と、ヤハウェ信仰、そしてモーセとの関係を発見したことを見るに、
彼が単なる妄想家ではなく、優れた直感力の持ち主だったと、評価できる。それで『モーセと一神教』という本だが、モーセともイクナートンとも関係ないことが、大量に、ごちゃごちゃと書いてあって、正直うぜーとか思っていたのだが、改めて読み直すと、それはそれなりに面白い。特にこれが、1934年以降1939年まで、ヒトラー政権が誕生して、ユダヤ人であるフロイトがイギリスに亡命した、最晩年に書かれているということを勘案して読めば、それなりに楽しめる。フロイトはオーストリアの人だが、1938年3月にヒトラーがオーストリアを併合している。『モーセと一神教』の前半部分はそれ以前に書かれているが、途中から、明らかに、文章が混乱し緊迫しているのがわかる。

彼は、なぜユダヤ民族が迫害されるかということを、彼なりに分析している。

彼は、人類は先史時代からずっと、何千年も何万年も、父親殺しを続けてきたと主張する。アッカド王国のサルゴン王の伝説に類似する、さまざまな神話の例をあげて。父親と子供は殺しあう、強い子供が父親を倒して自らハーレムの主となる。近親姦忌避と部族間婚は、遺伝的有害性に基づくのではなく、父子間の闘争に由来するとさえ言う。そして、モーセやイエス、その他の預言者はユダヤ人によって殺されたが、それは人類の父親殺しの習性を受け継いだものである。つまりメシアというのは自分の民族に殺される。そしてユダヤ人もまた人類に迫害される。そういう理論になっていて、もはやそこでは、モーセとアトン教の関連などという主題は、放置されてしまっている。ま、ともかく、『モーセと一神教』は彼が生涯展開してきた理論の集大成になっていて、特に『トーテムとタブー』という1913年という初期の理論の発展形として提示されていて、正直うざいが、まあすこし面白い。

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