メディアの業

すでに[靖国神社合祀](/?p=16623)、[産経購読10年](/?p=16491)、[地方紙5紙の社説がソックリ。](/?p=1635)
などに書いたことの蒸し返しになるが、
私は2006年8月時点で日経を見限って、以来ずっと産経を読み続けていることになる。
ということは現時点でもまだ10年経ってないわけだ。

> 2つ目の話題は、元宮内庁長官の日記と手帳に関する報道の件です。昭和天皇が太平洋戦争のA級戦犯の靖国神社合祀について不快感を示していたという報道をしました。これは1面トップで取り上 げ、国際的なスクープになりました。

> 日経がなぜ報道したかというのは、新聞としての原点で考えたということです。いろいろな検証の結果、正しいと判断した事実があります。これを1カ月か1カ月半後のなんらかの政治的なイベントに影響を与えかねないから押さえ、1年後に公表したとします。これこそまさしく政治的利用と言えるのではないでしょうか。

> 正しいと検証された歴史的な事実は読者に早く伝える、それが政治的にどういう影響を与えようと、読者にまず知らせるという行動をとる。これは新聞に限らずメディアの非常に重要な基本であり、日経は日経としての編集方針を忠実に守って掲載しました。

日経が富田メモを入手したのは2006年5月。
もちろん誰かが意図的にこの時期を狙って、わざわざ日経というメディアを選んでリークしたのである。
記事にしたのは2006年7月20日。
「1カ月か1カ月半後のなんらかの政治的なイベントに影響を与えかねないから押さえ」というのはつまり、
小泉総理の総裁任期満期総辞職とその前に行った靖国参拝を言っているわけである。
普通に考えれば、富田メモをリークした者は、小泉を靖国に参拝させたくない誰かである。

日経は発表を若干遅らせることはできたがそうしなかったという。
逆に小泉靖国参拝にぶつける形でセンセーショナルに煽ったのだ。
終戦記念日まで一ヶ月きった時期にトップ一面でだ。

いや、一番の問題は、この日経のスクープ以来世論が、
昭和天皇が靖国参拝しないのはA級戦犯が合祀されているからだということに固まってしまったことだ。
詳細に分析すれば、昭和天皇が靖国参拝しない理由は他にある。
きちんと分析したきちんとした論文として発表していれば世論はこれほど騒がなかった。
しかし日経はその真逆のことをしたのだからやはり罪は重い。

報道はつねに脚色される。報道は事実ではない。
報道と事実はむしろ対極にある。
事実を称したければ仮説の一つとして提示すれば良いだけである。

メディアは単に事実を即座に発表しましたではすまされない。

> 正しいと検証された歴史的な事実は読者に早く伝える。

これこそが日本経済新聞社東京本社編集局総務小孫茂の、そしてより一般的にはメディアというものの確信犯的な大嘘だ。
検証したというのは要するに秦郁彦・半藤一利の二人に分析させたというだけだろう。
それは個人の見解以上のものではないし、
事実を確認したものでもない。
歴史というものは、歴史的検証とか事実とかいうものは、そんなやすいものではない。

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