加藤千蔭「うけらが花」
貞直卿より季鷹県主へ消息におのれがよみ歌のうち二首殊にめでたまへるよしにてみづから書きてまゐらせよとありければ書きてまゐらすとて
武蔵野や 花かずならぬ うけらさへ 摘まるる世にも 逢ひにけるかな
* 富小路貞直。千蔭の弟子。千蔭は江戸の人のはずだが。
* 加茂季鷹。京都の国学者、上賀茂神社の神官。
これが歌集の名の由来だと思われるが、 自分を「うけら」にたとえて謙遜しているのはわかるのだが、
なぜ「うけら」? さまざまな野の花の一つということか。虫のオケラにかけているのかな?
本歌取りで、万葉集
恋しけば 袖も振らむを 武蔵野の うけらが花の 色に出なゆめ
あるいは
我が背子を あどかも言はむ 武蔵野の うけらが花の 時なきものを
または
安齊可潟 潮干のゆたに 思へらば うけらが花の 色に出めやも
「うけら」。キク科の多年草「おけら」のこと。
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