東ローマ帝国が滅びる直前一番近かったのはキエフ公国だった。血筋が一番近いのはグルジアとかアルメニアだったかもしれないが、
近隣諸国で一番でかいのはキエフだったし、
その後継のハールィチ・ヴォルィーニ公国とかモスクワ公国とか。
ともかく東ローマが滅んだ後にその血統と文化を継承したのは、いまおおざっぱにいうところのロシアの中にみんな入ってる。
なんでそうなったかといえば、キリスト教がカトリックとギリシャ正教に分かれたせいで、
両者の間ではほとんど通婚がなかったわけだ。
西ヨーロッパは、のちに宗教改革があるけど、要するに、王侯はみんな親戚どうしだから、
いざとなれば外敵には団結してあたるけど、
東ローマは血縁関係が薄いから見捨てられてしまった。
おなじようにギリシャも。
だけどまあ、近代になって、西ヨーロッパが対外進出し始めると、
一度は見捨てて見殺しにしたギリシャ世界、というか、ヘレニズム世界に食指を伸ばし始める。
オックスフォード辺りの学者が一生懸命ギリシャ語の勉強をやる。
その背景にはやはり、新約聖書がもともとはギリシャ語で書かれていたからでもある。
それで東ローマが滅んで400年近くたってから、
やっぱギリシャは俺等のもんなんじゃね、という機運が西ヨーロッパで盛んになる。
イギリス人もドイツ人も夢中になる。
一方、ロシアを含めたギリシャ正教の国々は旧態依然としてたわけよね。
というより、ロシアもペテルブルクなんか作ってドイツとかの西ヨーロッパの文化文明に憧れて、
もうギリシャとかどうでも良いと思ってた。
まあそれが今ちょっと話題になってる「社会問題」化しちゃったわけで、
ヨーロッパの若者がフィーバーして、ギリシャ独立戦争とかにつながる。
ギリシャは最初独立して王国になったが、その王様がなんとバイエルン王国の王子。
その理由が、東ローマ皇帝の血を引いているからってものなんだが、ものすごいこじつけだ。
ドイツ人のヘルダーリンも『ヒュペーリオン』とかいうおかしな小説書くし。
ゲーテもヨハンナ・シュピリもギリシャ大好きだった。
冷静に観察するとかなり頭おかしい。
しかも頭おかしいってことに自覚症状が無い。
自分たちがギリシャ人の子孫だって本気でおもってる。
ギリシャ人の子孫は今のトルコ人だよな。明らかに。
ついでにイタリアもオーストリアもイギリスもフランスもロシアもどんどんオスマントルコに進出して、
領土を切りとりはじめた。
でまあ、オックスフォードで始まった古代ギリシャ研究というのはすごいものではあるのだが、
もともとはなんの根っこもないもので、
特に初期の研究はけっこうおかしなものもあり、
それをいままじめな学者は一生懸命修正しようとしているのだが、
いったん定着したステレオタイプはなかなか消せない。
キリスト教とか19世紀のヨーロッパの哲学なんかとすごく深い教義の部分で絡み合ってしまっているので、
分離できなくなっている。
で、日本なんかはただのヨーロッパの受け売りだから、よけい始末に負えない状態に今ある。