岡本綺堂、野村胡堂、池波正太郎

グランド・ブダペスト・ホテルという映画に冒頭、この物語を創作したとされる作家が、「よく誤解されがちだ。「作家は常に想像力を働かせ、絶えずさまざまなエピソードを発明している。何も無い所から物語を夢想している」と。ところが事実はその逆だ。作家と見るや人々はネタを持ちかけてくる。」などと語るシーンがあって、実際そうなのだろう。いったん売れっ子作家になってしまえば編集者が次から次にネタを持ち込んでくるだろうし、ファンたちも、場合によっては何の見返りも求めずに自分のネタを作品にしてほしいと提案してくるかもしれない。さらにはそのネタはもともと私が先に考えたものだと訴えてくる人もいるかもしれない。

野村胡堂の池田大作や銭形平次はかなり読んだ(というより朗読を聞いた)ので、だんだんパターンはわかってきた。これらにはたまに長編もあるがだいたいは短編もしくは短編と中編の中間くらいの長さで、岡本綺堂や池波正太郎らと比べても一番わかりやすい(朗読で聞いているだけでも読める。逆に岡本綺堂や池波正太郎を朗読だけで読むのは難しいかもしれない)。だいたい、一番犯人らしい人物がそうではなく、一番犯人らしくない人が犯人であった、というこしらえになっていることが多い。そういう、読者の推理を誤らせるような仕掛けが随所に仕掛けてあるから、読み慣れてくるとそういう手口には引っかからないぞとこちらも身構えるようになる。

岡本綺堂は江戸時代の人にしか知り得ないような、後の時代には創作もできないようなエピソードを拾ってくるのでそこが面白いのだが、純粋に推理小説として読みたい人にはそこが逆に邪魔かもしれない。非常に懐古的で、耽美的なところがある。池波正太郎となるとかなり現代小説に近づいていて、また、推理とか江戸情緒というよりは、かなりチャンバラ、つまりテレビドラマの時代劇にもともと近い内容になっている。鬼平などは中編から長編で長いものが多い。野村胡堂の作品がおやつのようにさらっと読めて楽しめるものだとすれば鬼平はこってりしたフルコースのようなものだ。

岡本綺堂、野村胡堂、池波正太郎。この三者を比較考察している人、いそうでなかなかいない。ちゃんと読むのは大変だし、たいていの人はテレビドラマで見知っているだけなのだろう。

ホームランドを結局全部そろえようと思っているのだが、なかなか手強い。3時間くらいのblu-rayが3枚組みで4巻くらいあるから、全部で40時間くらいはあるんだろう。久しぶりにきちんと最初から見ると以前よりずっとわかり良いのはやはり最初からブロディ軍曹がテロリストだってことをわかった上で見ているからだ。ブロディが死ぬまでが本編で後は惰性みたいなもんだろうから、最初のあたりはともかくきちんと見ることにする。

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