地雷原

定年まであと6年半、今の仕事を後任に引き継げる程度に適当に整理してゆっくりとフェイド・アウトしていく予定だったが、実際に役職につき仕事に手をつけてみるととんでもなくたくさんのことを裁かなくてはならないような気がしてきた。いやどれも職務上、手を付けるべき案件ばかりであるが、もっとも賢いやり方は、まったく手をつけない(で、かつ手をつけたふうに処理する)ことだとも思える。現状には確かに問題がある。しかし私にそもそも、(仮にそれをする能力があったとしても)それらを改善する義理があろうか。渡世の義理。一宿一飯の義理。結局万事がそんな浪花節的な問題に思えてくる。

私はもともと周旋屋ではない。一研究者に過ぎない。40代の頃までは積極的に人間関係を広げようとしてきたが、その後外の活動も人付き合いも減らしてきたから、なんかやれと言われても簡単に手配はできない。できることといえばごく身近な人で、手伝ってくれそうな人のつてを頼って人を呼んでくる、それもある程度時間の余裕を見て早めに手を付ける、くらいしかない。今までもそうしてきたつもりだが、これからはよけい慎重にやる必要がある。逆に頼りになるのかならないのか、あまり当てにならない人は敬して遠ざける。ほんとに頼れる人が二人か三人いて、事前にこれでもかというくらい根回しをして、不確定要素をできるだけ減らす。そういうやり方でやればなんとかなりそうな気がしてきた。

思うに役職を与えられ権限を付与されても、関係する部署が増えることによって、それらすべての部署と調整した上でないとものごとを決められないし行うこともできない。根回しするにも限度がある。できることが増えたようで実はできることは減っているともいえる。組織の中で飼い殺しになる、というところに追いつめられてしまう。そうした事態は避けねばならぬ。年寄りになって改めて人生勉強をさせてもらっている。たぶん豊臣秀吉の人生ってのもこんな感じなのかな。それを追体験してる気分。

地雷を踏まぬようにといろいろ予防線を張ってきたつもりだがまんまと地雷原のど真ん中にはまってしまった。困ったことである。

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