楠公讃

上田秋成の歌、三首:

> 君が思ふ 君にありせば 剣太刀 研ぎし心の かひぞあらまし

あなたが思うような主君であったならば、研ぎ澄ました心の甲斐もあったでしょうに。
最初の「君」は楠木正成を、次の「君」は後醍醐天皇を指す。

> 君こそは 君を知らざれ 天地の 神し知れらば 知らずとも良し

主君はあなたを知らなかった。
神が知っていたなら、知られずとも良い。
最初の「君」は後醍醐天皇で、次が楠木正成。

> ほまれある 名をばあふぎて おほかたは 君が心を 知らぬなりけり

名誉ある名前を仰いでもだいたいの人はあなたの考えを知らなかったのだ。
今の人というよりは、建武の新政の人々を批判しているように見える。

面白い歌だな。どれも、橘曙覧よりはずっとできが良い。

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