新葉和歌集・岩波文庫復刻版

岩波文庫の新葉和歌集も買ってくる。
だいたい源氏物語とか平家物語などはいつでも買えるが、
こういうやつは復刻されて数年で絶版となるので、
今のうちに買っておかないと先々苦労することになる。
値段も七百円程度と特に懐も痛まない。

もちろん地方自治体の図書館など、いくところにいけば、日本文学全集とかそんなものの中に新葉和歌集も収録されているだろう。
しかし重い。携帯に不便。
日頃持ち歩いて愛読するにはやはり紙媒体の文庫本は重宝する。

岩佐正氏、解題に曰く、神皇正統記は文の新葉和歌集であり、新葉和歌集は歌の神皇正統記である、と。
まさにその通りだ。
新葉和歌集は戦前にはそれなりの評価がされていたのだろうが、戦後例によって軍国主義的だとして、無視されたのだろうと思う。
そもそも軍国主義的な(準)勅撰和歌集というのが、ちとすごすぎる。

ところが、カバーに書かれた解説が言うには「二条家の流れをくむ歌人、宗良親王撰の準勅撰和歌集」とか「四季や恋など伝統に従った技巧的な詠歌が多い」
とか、まったくピント外れなことを言っている。
大丈夫か岩波書店。
いったいどういうつもりで、この戦前の本を2008年になって復刻したのか、理解に苦しむ。

いったいに、皇族や貴族らが宮廷でのんべんだらりと詠んだ歌はたいていつまらないが、
配流されたり骨肉が誅殺されたり、逆境にあるときにはなかなかすばらしい歌を詠む。
すてきすぎます。

たとえば、式子内親王にしても、ただの宮廷歌人で藤原定家の弟子だというだけなら大したことはなかったろうが、
あの以仁王の同母の姉弟の関係にある。
その境遇があのようなすさまじい歌を詠ませたのであろう。
いやあ、すごすぎます。

昭和天皇の歌は、わかりやすすぎて困る。
それも、昭和五十年以降は特にくずれすぎ、軽すぎ。もはや五七調でも七五調でもなく、現代語をそのまま使っている。
外そうかと思ったが、わかりやすいのは和歌の初心者には入りやすいだろうし、
悠久の御製の歴史の流れを知るには、あっても良いかと思った。

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