市販の豆腐では,あたりはずれが比較的少ないという意味で「充填絹ごし豆腐」が好きだ.固めたあと水にさらしたやつは,味が抜けてしまってるような気がする.「充填絹ごし豆腐」は大豆の味が封じこめられているような気がする.今日は最初そのままで,そのあとフリーズドライの「きざみわけぎ」と醤油をかけて食べてみた.
月: 1996年5月
中台危機ダイジェスト
新聞が溜ってきたので,捨てる前に「中台危機ダイジェスト」でも
書いておこうと思っていろいろ読んで見たら,
ものすごい量なので,ちょっといやんになってきた.
でも時間あるだし.やってみるか.
華声和語ものぞいて見たが,あんだけ大騒ぎになったわりには
あまり記事がない.
かなり遠慮していると見た.
2/1 台湾株価急落
国民党系企業,中央銀行の連日の介入.
今から思えばこの時期の株は「買い」だったよな.
2/2 米の不確実性有益
ナイ前米国防次官補に聞く.
> --中台間で衝突が起きたらどうするのか.
> 米国政府はそうした質問には答えないことにしている.
台湾を守ると言えば,台湾は冒険をしようとするかもしれないし,
逆ならば,今度は中国がより攻撃的な姿勢をとるかもしれないからだ.
> この問題では(米国がどう出るか分からないという)不確実性こそが戦略的に有益な役割を果たす.
朝鮮戦争の際に何が起きたかを思い起こすべきだ.
当時,米国はいったん韓国を防衛しないと表明,その後,
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が韓国を攻撃し,結局,
米国が韓国防衛に乗り出した.
この記事については既に[3/8](/?p=16788)
にも言及している.
さて,上の朝鮮戦争のときと全く同じことが南沙諸島問題についても言えるだろう.
フィリピンから米軍基地が撤退したことが,現在の南沙諸島問題の遠因になっている.
結局フィリピンは中国に対抗するために米軍の軍事力が必要なのであり,
フィリピンはまっさきに,日米安保見直しに賛成した
(日経 4/18.ラモス大統領「米国がアジア太平洋地域と軍事的関わりを持ち続けることがはっきりした.宣言を歓迎する.」).
2/8 福建省で軍事演習
人民解放軍が 2/10 未明から福建省沿岸で陸海空軍の合同演習.
旧正月(19日)前に終了.
2/10 中台軍事力比較
米国介入なしでも台湾は自力防衛できる,との楽観的な見方も.
ただしミサイル攻撃にはほとんど無防備.
ついでに台湾に旅行したとき見聞したことを書く.
台湾では social service や military service がある.
いわゆる徴兵・兵役である.
蒋介石を祭った中正紀念堂というのがあって,
ここで女子高生らしき連中が日曜の午後にブラスバンドとかバトントワラーとかやっている.
一見なごやかな光景である.
しかし,よくよく見るとバトンと思っていたものが銃剣なのである.
つまりこれも軍事演習の一部と見てよい.
日本では,普通の女子高生が武器の取扱いの稽古をしたりすることは,ない.
つくづく日本は平和である.
と思った.
2/13, 14 中国の集結部隊「大規模ではない」
40 万人という数は,台湾の経済に影響を与えるために流された可能性がある.
とのこと.
実際は 15 万人以下(台湾国防省発表).
また,李登輝総統の得票率を下げるため,とも.
2/14 米政府高官相次ぎ中国牽制
ペリー国防長官.
> 中国は今こそ正しいメッセージを米国に送るべきだ,
この段階では言葉による牽制.
2/23 台湾の歴史
台湾には外省人(共産党政権誕生後,中国本土から移り住んだ人)と、
本省人(それ以前から台湾に住んでいた人)がいる.
1947年,台湾住民は初め中国復帰を喜んだが,
国民党の強権と腐敗に失望.本省人の騒乱を武力鎮圧.
1949年,国民党は共産党との内戦に敗れ,台湾に移動.
少数派の外省人が権力の一切を握る.
本省人の亡命者国外活動.
1988年,本省人の李登輝総統登場.
独立運動も合法化.
ちなみに李総統は本省人.京大 OB だそうだ.
2/29 米国対中赤字急増
米国の対日赤字が減少する半面,対中赤字が急増し,
対日赤字に迫る勢い.
そうか~.
中国ってけっこう儲けてるんだな.
それで米国は対中制裁とかって言ってるんだな.
3/4 二・二八事件
1947.2.27 国民党政府の警官がヤミタバコ売りの中年婦人を殴打.
翌日には台湾全体の騒動に.
蜂起した人々が親日的であったことが災いし,
国民党関係者との凄惨なリンチ合戦に.
南京中央政府は精鋭部隊を派遣して暴動を鎮圧.
二万人以上の台湾人が殺された.
台湾人は国民党に失望.
3/5 ミサイル演習発表
人民解放軍は 3/5 から 3/15 まで,台湾に近い東シナ海と南シナ海でミサイル発射訓練をすると発表.
3/6 即時反撃
台湾国防部長.
> 中国軍の発射したミサイルが一発でも台湾の領海 12 カイリに着弾した場合,台湾は直ちに反撃する.
3/8 ミサイル演習強行
発射されたのは地対地中距離ミサイル M9.
台湾を緩やかな経済封鎖に置く形.
橋本首相
> 公海上では法的に問題ないのかもしれないが,不幸な方向にあると思う.
3/11 空軍機避難打診
台湾が,フィリピン,シンガポール,インドネシアなどに,
中国との軍事衝突になった場合に空軍機を避難させられるかどうか,
非公式に打診した.
中国は,空軍設備をミサイル攻撃して制海・制空権を握ったのちに,
台湾に上陸してくると考えられるため.
3/12 中国実弾演習
広東省沖海空軍実弾演習.
横須賀を母港とする米第七艦隊空母インディペンデンスを台湾沖に派遣.
原子力空母ミニッツ,ペルシャ湾から急行.
ミニッツは通常パキスタン・インド間の紛争に備えてインド洋辺りにいる.
クリストファー国務長官
> 中国の演習は無謀な威嚇であり危険な威圧だ.
米国は必要な場合に助けになるため台湾に近付く。
橋本首相
> 公海上で動いているわけだから,第三国がとやかく言うことはできない.
確かに.しかし限りなく当事者に近い第三国である.
外務省
> 西側諸国がさまざまな行動を起こしているにも関わらず,中国側は必ずしも期待したような自重と自制の方向にない。
> わが国が自制を求めたにも関わらず,新たに実弾射撃訓練まで公告したのは,
台湾周辺での軍事訓練を本格化させるもので,アジア全体の安定にとって好ましくない。
この日の産経新聞第三面「怪刀乱麻・江沢民さんの記念碑を」
は,いかにも産経らしい論説.
- 中国がおっかない国であることを自分からみせつけた.
- 中国は安心できないと周辺諸国がつくづく思い知らされた.
- 日米双方で安保の重要性が増してくる
ことから,江沢民の記念碑を浦賀に建てよう,という話.
3/13 米議会に「親台」広がる
イギリス,強い批判.
ロシア,自制要望.
中国,米艦隊派遣批判.
3/14 防衛庁分析
3/15 日経朝刊第一面左下
12~13日,米軍と自衛隊が,「演習を装って集結した中国軍部隊が台湾海峡にある金門,
馬祖両島やそれ以外の台湾の島に対して限定的奇襲攻撃をかける恐れがある」と判断,極めて高度の厳戒体制に入っていた
ことが14日防衛庁筋が明らかに.
「防衛庁筋」とは?
この件については[3月10日](/?p=16781)
にも触れた.
金門島というのは,マカオのすぐ近くにある島で,
福建省から数キロしか離れてない.
台湾領土ではあるが台湾本島よりも中国本土に近い.
3/18 福建省沖陸海空軍合同演習
3/19 米下院台湾防衛決議可決
3/19に米下院.
中国が台湾を攻撃した際に軍事介入を米政府に求める決議を可決.
> アメリカは中国による侵略,ミサイル攻撃,海上封鎖から台湾を守らなければならない.
艦艇,航空機,対空防衛システム供与を政府に求める.
総統選候補者
- 李 登輝
- 与党 国民党
- 優先課題は中台敵対状態の集結
- 長期的には中台統一.
- 優先課題は中台敵対状態の集結
- 彭 明敏
- 野党 民進党,元台湾大学教授,政治学部長
- 台湾独立.日米による牽制望む.
- 林 洋港
- 無所属,前司法部長.前国民党副主席.
- 中台統一
- 国家は一つ.統治権は二つ.
- 中台統一
- 陳 履安
- 無所属,前監察院長
- 中台統一
- 李総統のあいまいな態度が中台緊張の原因.
- 中台統一
3/20 米,台湾にミサイル供与
米政府.台湾に地対空ミサイル「スティンガー」供与決定.
台湾要請の潜水艦供与は見送り.
3/21 米上院決議
米上院も,下院同様決議.
3/23 総統選開始
3/24 台湾総統直接選挙
「中国世界初」の最高指導者直接選挙.
アジア諸国のコメント慎重.
中国に遠慮か.
中国発言「台湾は中華人民共和国の一部」から「一つの中国」へ軟化.
李総統勝利宣言,公用語の北京語ではなく台湾語で.
> 党派の利益を越えて一票を投じてくれた方にお礼したい.
中国の軍事演習の危機感のために,
与党国民党ばかりでなく,野党民進党の独立派本省人の支持を広く受けて圧勝したことを指す.
民進党候補が 30% 得票すれば,
選挙後国民党と民進党の連立政権が誕生するというシナリオであったが,結果的には国民党の一人勝ちになった.
開票結果
- 李 登輝 54.0 %
- 彭 明敏 21.0 %
- 林 洋港 14.9 %
- 陳 履安 10.0 %
- 彭 明敏 21.0 %
3/27 米艦隊撤収
26日,ペリー米国防長官
> 危機は今や過ぎ去った,と理解している.
> 中国は軍事演習を終え,自軍へ撤収した.楽観的な見方さえしている.
米国務省バーンズ報道官
> 中国側の発言は,台湾との平和的な対話の場を模索しているかのようだ.
米空母インディペンデンスは母港横須賀へ帰還を開始.
米原子力空母ミニッツはオーストラリアへ移動.
参考文献
華声和語
[ 4/1 No. 80]
[ 3/26 No. 79]
[ 3/18 No. 78]
[ 3/12 No. 77]
[ 3/4 No. 76]