『虚構の歌人』では承久の乱のことを日本最大の黒歴史と書いた。
後堀河天皇が三種の神器の権威だけで即位したのは律令制が否定されて古代の呪術が復活したからだと。
歴史を巻き戻したからだと。
ましかし、改めて思うに、三種の神器はそれまでも政争の具に使われてきた(花山天皇退位の時、安徳天皇入水など)、
のだが、承久の乱で三種の神器が単なる皇位継承の手段として使われたことで、
完全に呪術的価値を失った、とも解釈できる。
また律令制も崩壊した。
承久の乱はまさに、呪術性も律令制も破壊して、武家政権と封建社会をもたらした。
その危うい転換点を北条泰時という天才がうまく連結した。
不連続になったはずの日本の歴史を、完全に溶接してみせたのだ。
泰時があまりにも天才なので私たちは承久の乱も泰時も、長い日本の歴史の中で見落としてしまうくらいだ。
皇位継承というものが北条執権により純化され後世不朽に伝えられた、といえる。
このことによって承久の乱は黒歴史を転じて白歴史にした、と言えなくもない。
泰時に比べて、世の中をぐちゃぐちゃにしてしまった清盛や足利氏やその後の戦国武将のほうが目立っているのは、
歴史の皮肉というものであろう。
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