契沖の「漫吟集」なんだが、
これ読むのはかなり骨が折れる。
たまに秀歌が混じるが他は凡作としかいいようがない。
数が多くてきちんと分類されているから、読んでいるとだれる。
全体的に退屈と言われても仕方ないと思う。
> 菅の根に 雪は降りつつ 消ぬがうへに 冬をしのぎて 春は来にけり
悪くない。
「菅の根の」が「長き」にかかる枕詞だと知っていればすんなりわかる。
古今集の
> 奥山の 菅の根しのぎ 降る雪の 消ぬとかいはむ 恋の繁きに
の本歌取りだわな。
> うぐひすも 鳴かぬかぎりの 年のうちに たが許してか 春は来ぬらむ
これもまあ、悪くない。
「たが許してか」が珍しい。
> 宿ごとに いとなみたてし 門松の まつにかならず 春は来にけり
どうやらこれも本歌取りらしい。藤原顕季
> 門松を いとなみたてる そのほどに 春あけがたに 夜やなりぬらむ
ときどきすごく良いのがある。
> ねや近き 葉広がしはに 音立てて あられし降れば 夢ぞやぶるる
「夢ぞやぶるる」が良く効いている。
> 軒ばなる 蛛のいがきは 知らねども 山の嵐に 夢ぞやふるる
なんとこの正徹の歌の本歌取りらしい。
> 踏めば消え 消ゆれば摘みて 春の野の 雪も若菜も 残らざりけり
少し面白い。
> 立ち出でて 涼むそともの 木陰より かへりもあへぬ 夕立の空
木陰で涼んでいたら夕立がふりそのまま雨宿りした。
なかなか良い歌。
> しづのをが 刈りにし跡の 日だに経ず 一つに茂る 野辺の夏草
「一つに茂る」が面白い。
> 池の上の 菱の浮き葉も わかぬまで 一つに茂る 庭のよもぎふ
この良経の歌の本歌取りか。
> おほかたの 常は水無き 山川も 石さへまろぶ 五月雨の頃
「石さへまろぶ」が斬新。
> 春雨は 今年のみやは 花散らす 昔をかけて 今日は恨めり
> 霜の上に 寝るここちして 夏の夜の 床に影しく 月ぞ涼しき
> なには潟 堀り江にのぼる ゆふ潮の 限り知らるる 朝氷かな
> 水のおもに 散りて浮かべる 木の葉より まさりて薄き 朝氷かな
> 諏訪の海の こなたかなたに あひおもふ あまもこほれば かちよりぞ行く
少し面白い。