故郷七十年

[大塚英志『キャラクター小説の作り方』](/?p=17797)の続きなのだが、
この中に「柳田国男による古典文学批判」として出てくるのは、
「頓阿の草庵集」というごく短い文であり、
『定本 柳田国男集 別巻3』に載っている。
この『別巻3』は『故郷七十年』『故郷七十年拾遺』からなっていて、
柳田国男が神戸新聞の求めに応じて、口承で残した自伝であるという。
序に昭和三十四年とあるから、1959年、柳田国男84歳、死去する3年前に出版されたことになる。

明治20年というから、柳田国男が12歳の時に、
彼は故郷の播州を、兄・井上通泰とともに離れる。

> 私は早熟で子供ながらに歌をやつてゐた。私の家に鈴木重胤の「和歌初学」といふのがあり、四季四冊のほかに恋、雑の上・下など七冊になつてゐた

などとあり、香川景樹の

> しきたへの 枕の下に 太刀はあれど 鋭(と)き心なし いもと寝たれば

が引用されている。
12歳にして景樹のこの歌を暗唱していたとは確かに早熟である。
鈴木重胤は江戸時代の国学者というか、平田篤胤系の神道家のようである。

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