平家物語を、鬼界ヶ島に三人の男が流される、という辺りまで読んで、
なんかどこかで読んだことがあるなと思ったら、
菊池寛の「俊寛」だった。
三人のうち俊寛だけが許されず、鬼界ヶ島に住み続けるのだが
「自分で拓いた土地に、自分の手で蒔いた種の生えるのを見ることは、人間の喜びの中では、いちばん素晴らしいものであることを、俊寛は悟った。」
といった具合にいつの間にか原住民の暮らし最高みたいな話になっていく。
この話は実はけっこう有名で、
近松門左衛門が浄瑠璃にし、菊池寛に続いて芥川龍之介も小説にしたらしい。
ははあ、なるほど。
芥川龍之介の俊寛の冒頭で、
「ある琵琶法師が語ったのを聞けば、俊寛様は御歎きの余り、岩に頭を打ちつけて、狂い死をなすってしまうし、わたしはその御死骸を肩に、身を投げて死んでしまった」といっているのは倉田百三の戯曲「俊寛」のことで、
「またもう一人の琵琶法師は、俊寛様はあの島の女と、夫婦の談らいをなすった上、子供も大勢御出来になり、都にいらしった時よりも、楽しい生涯を御送りになった」と言っているのが菊池寛の小説「俊寛」なのだなあ。
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