貫之と定家

知り合いに[大塚英志](/?p=13903)についてこないだブログに書いたでしょとか言われて、
最近たくさん書き散らしているのですっかり忘れていたが、
たしかにそんな人の話を書いた。
その知り合いというのは私の話の中にもちょくちょくモデルとして出てくる。
直接そのまんまではなくて、
彼のパーソナリティの一部がある人物のパーソナリティの一部として使われていたりする。
そんで彼といろいろ話をしたのだが、
私はkindleで旧作を含めて割とたくさん数を出している方だと思う。
また、ジャンルも割とあれこれ試しに書いてみて、1年経ってみて、
彼の話など聞きながら客観的に分析してみたのだが、
やはり、小説というのは売れるのはラノベである。
中学卒業高校受験くらいの知識で読めるものがストライクゾーンである。
大学受験だと難しすぎる(源氏物語を原文で読めるやつなんていないし、
今年のセンター試験の問題とかあり得ない(笑))。

蘊蓄本や解説本、歴史小説を書くのはよい、
本を読むことで中学か高校で昔習ったなというような曖昧な知識を掘り返して知識欲を満たしてくれるような本は売れるが、それより難しい本は、要するに売れないと。

そこでまあ聞いてみたのだが、
では、
紀貫之と藤原定家はどちらが有名か、
というと、紀貫之の方がずっと有名らしい。
でも定家は小倉百人一首とか作ったよね、とかいうとそれはそうだが、
紀貫之は古今集と土佐日記でそっちが有名だ、ということになるらしい。
そう言われればそうなんだが、
ずっと和歌のことを調べていると、なんだか紀貫之より藤原定家の方がずっと重要な気がしてくる。
世間一般の感覚がわからなくなる。

西行とか和泉式部はすごい歌人なんだが、たぶん世間一般でいうと、
ものすごくマイナーなんだよね。
そういうところいくら書いても売れない。
本屋とか図書館にいくらそういう本が並んでたしても、たぶん売れてない。

一人で書いて一人で売るということはDTPみたいなもんであって、
一人の人間が作家となり編集となり営業をこなさなくてはならないのだが、
それはけっこう難しい。

で、うちのブログとかみてると吉田松陰で見にくる人が割といる。
じゃ吉田松陰で書けばどうかと言うと、
吉田松陰なんて誰も知らないよと。
そこで、
坂本龍馬ならみんな知ってるけど、龍馬の和歌なんてみんな松陰のまねだよ、というと、
なら松陰と龍馬という本かけば売れるんじゃないかという話になり、まあそうかもしれんねと思う。
「[龍馬を斬る](/?p=6694)」みたいな本書いてみたいが、
ブログに書いたネタかき集めただけですでに本になりそうではある。
もしかしたら売れるかもしれんが、いろんなところから怒られそうで怖い、正直な話。
龍馬が新葉集の影響を受けているというのは、まああり得ない。
新葉集なら私はよく知ってる。
宗良親王の話(「将軍放浪記」)も書いたし。
龍馬の歌とは何の関係もないと思う。
みんな新葉集も宗良親王も知らんでよく言うわと思う。

あるいは貫之と定家とか。
そういう本書けば売れるんじゃないか。
そういう売れ筋の本をいくつか書いておけば私の売れない本もついでに読んでくれるかもしれん。

女子校と男子校が毎年正月に百人一首のカルタ取りの勝負をする、
そこで百人一首の歌を一つずつ紹介する、というラノベ書いたら売れるんじゃないかという話になり、
そういうマンガすでにある、「あかねさす」じゃなくて「ひさかたの」じゃなくて「ちはやふる」
ってやつらしい。
全然しらんがたぶん私が書こうと言ってるやつとはあまりネタはかぶってないだろう。

> ちはやふる かみよもきかず たつたがは からくれなゐに みづくくるとは

業平か。
業平ネタならいくらでも書けそうな気がする(もう書いたけど)。
「あかねさす」じゃなくて「ひさかたの」じゃなくてなぜ「ちはやふる」というタイトルにしたかということは別に深い意味はないのだろう。
「ちはやふる」が一番タイトルにふさわしかった、ただそれだけだ。

で、「古今和歌集の真相」は私の意に反して割と人気があったんだが、
彼もおもしろかったという。
難しくなかったかというとまあ読めたという。
彼は和歌も日本史も普通レベルだと思う。
どうも知らずに自分の得意分野でかつストライクゾーンなものを書いていたらしい。
「将軍家の仲人」とどっちがおもしろいかというと、
新井白石とかおもしろくないですよとか言われる。
大塩平八郎(「巨鐘を撞く者」のこと)は有名だろというと、
たしかに有名だがあまり興味ないという。
なんかいろいろ売れない方向にこれまで努力を重ねていたらしい。
企画会議は重要だ。

で、「古今和歌集」のどこがおもしろかったかというと、なんとなく全体的にだという。
本読んでしばらくたてばそんなものかもしれんがそれではわからんからと根掘り葉掘り具体的にどこがおもしろかったのかと聞くと、どうも藤原高子のどろどろした話とかがおもしろかったらしい。

そうなんだよね、たぶん。
読んだ後にああおもしろかったと思わせることは重要だと思うよ。

それで「百人一首」は短いからもう腐るほど解説本はあるんだが、
私なりに書いてみる価値はあるかなとすこし思い始めた。
あーそういえば丸谷才一も書いてたなあ。
このブログでは割と丸谷才一の批評とかしてて、
「古今和歌集」にも書いてたりするんだが、
丸谷才一論とか書いても誰も読まないよね。

実は俵万智はすごい歌人だと私は思っていて、
以前にも[プーさんの鼻](/?p=4366)とか書いてるんだが、
「ほんとはすごい俵万智」なんて本書いたら売れるんじゃないかとかどきどきするんだが、
同世代のまだ生きている人の評論なんて書くと怒られるんじゃないかと思って書けない。
俵万智は不倫からシングルマザーに突っ走った彼女の生き様がおもしろい。
それを赤裸々に歌にしてるところが彼女の歌のすごさなんだが、
単に現代語で和歌を詠んだひとくらいにしか思われてない。
そこを敢えて書いてみるのもおもしろいかもしれない。

現代歌人の評論なんて書ける人はいないよ、私以外は(笑)

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