人はやっぱり一匹狼では世の中に通用しないんだなと思った。だから政党というものがある。弱い者どうしが群れて力を持っているとも言えるし、強い者にみんながよってたかって群がっている場合もあろう。ともかく群れというものは力を持っている。群れが必ずしも正しいとは言えないが、ほかにどうしようもない。選挙が機能しているのは、選挙で納得しなければ後はもう暴力、武力しか残っていないからだ。だからみんな選挙結果に我慢している。
やはり人間を知るのにゴリラのハーレムやチンパンジーの群れを研究するのは大事だと思う。農業革命以前の人の社会を知る一番の手がかりだ。まあ、人を文明から隔絶したまったくの自然状態に戻して実験することも可能かもしれないが人道的には無理だよな。ある程度はシミュレーションできるのかもしれないが。
文明社会から完全に隔絶したヒトの群れの行動をシミュレーションすることはできますか。またはその結果はすでにありますか。
文明社会から完全に隔絶したヒトの群れ(集団)の行動をシミュレーションすることは、理論上可能であり、実際に計算社会科学や人類学、進化生物学の領域で様々な研究が行われています。
ただし、生身の人間を倫理的・物理的に隔離して実験することは不可能なため、研究は主に「マルチエージェント・シミュレーション(MAS)」という計算機上のモデル、あるいは「歴史上の孤立事例(自然実験)」の分析という2つのアプローチで進められてきました。
これらのシミュレーション手法と、そこから得られた興味深い知見について解説します。
1. 計算機シミュレーションによるアプローチ
現代の科学では、AIやルールに基づいた個体(エージェント)を仮想空間に数千〜数万人配置し、文明のない状態からどう行動するかをシミュレーションしています。
代表的なシミュレーションモデル
- シュガーケープ(Sugarscape)モデル
- 1990年代に開発された社会シミュレーションの古典です。仮想空間に「砂糖(資源)」を配置し、視覚と代謝機能だけを持つエージェントを放流します。文明のない原始的な環境から、資源の争奪、蓄積、移動、そして「格差の誕生」や「集団の移動(渡り)」が自動的に発生することが証明されました。
- 進化ゲーム理論と文化進化モデル
- 言語や技術がどう伝播するかをシミュレーションします。「他者の真似をする」「自分で新しい方法を開発する」といったルールを与えると、集団の規模が小さいほど技術が退行しやすく、一定以上の人口(クリティカル・マス)がないと文明が維持・発展しないことが数理的に示されています。
シミュレーションから得られた主な結果
- 「二極化」と「階層化」の不可避性
- 初期条件(エージェントの能力や初期位置)が完全に平等であっても、偶然の要素(たまたま資源の近くに生まれたなど)が重なるだけで、時間経過とともに必ず「富める集団」と「貧しい集団」への分化が起こります。
- 言語やルールの共通化
- 最初はバラバラな行動をとっていても、生存確率を最適化しようとする過程で、特定の「挨拶」や「獲物の分配ルール(規範)」が自発的に形成されます。
2. 歴史・現実の「自然実験」による結果(検証データ)
シミュレーションの正しさを検証するために、研究者は過去に「完全に、または高度に孤立したヒトの群れ」がどうなったかという実例(自然実験データ)を参照します。
① タスマニア・エフェクト(人口減少による技術の退行)
約1万年前、氷河期が終わり海面が上昇したことで、オーストラリア大陸からタスマニア島が完全に隔離されました。当時、彼らは高度な骨器や漁具を持っていましたが、数千人の孤立空間で数千年間暮らすうちに、「道具の作り方」を忘れ、技術が原始化(退行)していきました。
得られた知見: 外部から隔離された小さな集団は、文化や技術を維持できず、むしろ単純化していく。
② ピトケアン諸島の反乱者たち
1789年、英国船「バウンティ号」で反乱を起こした水兵たちとタヒチ島民が、無人のピトケアン島に逃げ込み、完全に孤立した社会を作りました。結果として、狭い空間での資源争いから殺し合いが勃発し、一時期は社会が崩壊寸前まで追い込まれました。しかしその後、残されたわずかな人員で独自のキリスト教的協調社会が再構築されました。
得られた知見: 極限の孤立環境では激しい権力闘争(生存競争)が起きるが、破滅の淵で「秩序を再自発的に形成する」能力もヒトは持っている。
③ センチネル族(現代の未接触部族)
インド洋の北センチネル島に住む先住民は、数万年間、外部の文明社会から完全に隔離されています。彼らは火を自発的に起こす技術を持たず(落雷などの火を維持しているとされる)、石器時代に近い生活を維持しています。
得られた知見: 外部との交流がない孤立空間では、数万年が経過しても技術革新(イノベーション)は極めて起きにくい。
3. シミュレーションの限界と今後の展望
現在、LLM(大規模言語モデル)の発展により、「生成エージェント(Generative Agents)」を用いたさらに高度なシミュレーションが可能になっています。AIに「あなたは原始的な狩猟採集民です」という人格を与え、数千人をシミュレーション空間に隔離する実験が始まっています。
ただし、以下の要素を完全に再現することはまだできていません。
- 生物学的なバグ(疫病や近親交配): 隔離された小集団では、遺伝的多様性の喪失や未知の病による全滅リスクが急上昇しますが、これを正確に予測するのは困難です。
- 人間の「不条理な行動」: 感情、宗教的な狂信、カリスマ的リーダーの出現など、数式化しにくい人間の精神性がシミュレーションの結果を大きく変えてしまうため、100%確実な予測結果というものは存在しません。
結論として
文明から隔絶されたヒトの群れは、「初期には激しい資源闘争が起き、やがて人口規模に応じた独自のルール(規範)や階層が自発的に生まれる。ただし、人口が少なすぎれば技術は退行し、社会は原始的な水準で固定化するか、全滅する」という傾向が、シミュレーションと歴史的事実の両面から導き出されています。
ゴリラやチンパンジー、ボノボをモデルとした例はありますか。
ゴリラ、チンパンジー、ボノボといった大型類人猿をモデル(ベース)にしたシミュレーションは、霊長類学や人類の社会進化を解き明かすための研究として非常に盛んに行われています。
彼らはヒトに最も近い遺伝子を持ちながら、種によって驚くほど異なる社会構造(集団行動のルール)を持っています。そのため、「なぜヒトはこのような社会を作ったのか」を逆算するための比較モデルとして、計算機シミュレーション(マルチエージェント・モデル)で頻繁に再現されています。
代表的な例やシミュレーションモデルをいくつか紹介します。
1. 類人猿の「社会構造」を再現するシミュレーション
オランダのシャーロット・ヘメルレイク(Charlotte Hemelrijk)教授らが開発した「DomWorld」と呼ばれる有名な霊長類シミュレーションモデルや、その後継モデルでは、個体に特定の行動ルールを与えることで、チンパンジー型やゴリラ型の社会が仮想空間に自動生成されるかが実験されています。
- マウンテンゴリラ・モデル(集団の維持とダイナミクス)
- マックス・プランク進化人類学研究所などは、ゴリラの出生率、死亡率、そして「強力なシルバーバック(雄のリーダー)の存在」をルール化したシミュレーションを行っています。
- ゴリラは1頭の雄が複数の雌を囲う「一雄多雌」の持続的な集団を作りますが、シミュレーション上でも「リーダーが死ぬと集団が完全に瓦解・霧散する」という、現実と全く同じ高い脆弱性が再現されました。
- チンパンジー・モデル(攻撃性と政治的アライアンス)
- チンパンジーをモデルにしたシミュレーションでは、個体に「高い攻撃性」と「順位(優位階層)へのこだわり」、そして「毛づくろい(グルーミング)による親密度の蓄積」をルールとして与えます。
- すると、仮想空間のチンパンジーたちは、単に強い者が勝つだけでなく、「2番手と3番手が結託してトップを動かす」といった政治的な同盟(アライアンス)を自発的に形成し始めることが確認されています。
2. 「チンパンジー vs ボノボ」の分岐シミュレーション
人類学において最も興味深いシミュレーションの一つが、「なぜチンパンジーは男系・暴力社会になり、ボノボは女系・平和社会になったのか」を環境の差から再現するアプローチです。この2種は遺伝的に非常に近いにもかかわらず、社会のあり方が真逆です。
計算科学者や進化生物学者らは、エージェントに共通の基礎 AI(欲求や生殖のルール)を持たせ、「資源の分布環境」だけを変えて長期シミュレーションを行いました。
資源の条件を変えた結果
| 割り当てた環境ルール(初期条件) | シミュレーション空間に現れた社会行動 |
|---|---|
| 【環境A】資源(エサ)が分散・枯渇気味 (ゴリラなどの競合がおり、エサの奪い合いが必要な環境) | 個体は生き残るために縄張り意識を強め、オス同士が戦闘同盟を組む。雌は孤立し、**攻撃的でオス優位の「チンパンジー型社会」**が自動生成された。 |
| 【環境B】資源が豊富で一箇所に集中 (ゴリラがおらず、エサがたっぷりある環境) | 雌たちが一箇所に集まって食事を共有できるため、雌同士の強い絆(ネットワーク)が生まれる。結果としてオスの暴力を雌の集団が抑え込み、**平和的でメス優位の「ボノボ型社会」**が自動生成された。 |
このシミュレーション結果は、「個体の性格(遺伝子)が社会を作るのではなく、置かれた環境(資源の量)が社会行動のルールを決定づける」という強力な証拠として扱われています。
3. 文化や「道具の使い方の伝播」に関するシミュレーション
近年(2020年代)では、野生のチンパンジーが「石でナッツを割る」といった道具を使う文化が、集団内でどう伝わっていくかをネットワーク分析とマルチエージェント・モデルで再現する研究も行われています。
- 個体に「他者の行動を観察して真似る(社会的学習)」という確率を設定し、チンパンジー特有の社会ネットワーク(誰と誰が仲が良いか)の中でシミュレーションを走らせます。
- その結果、単に「頭が良い個体」がいるだけでは技術は広まらず、「集団内での社会的地位(ネットワークの中心にいる個体)」がその道具を使わない限り、イノベーションは集団全体に定着しないという、チンパンジー社会の文化的保守性がシミュレーションでも証明されました。
ヒトのシミュレーションにおける位置づけ
これらの類人猿モデルから得られた知見は、そのまま「文明から隔絶されたヒトの群れ」をシミュレーションする際の基礎レイヤーになっています。
ヒトをシミュレーションする際は、**「チンパンジー的な高い攻撃性と政治力(同盟)」と、「ボノボ的な高い協調性と性的・社会的スキンシップによるストレス緩和」**の両方のパラメーターをハイブリッドで組み込むことが一般的です。
ヒトの社会シミュレーションは、これら類人猿の持つ「野生の行動ルール」の上に、さらに「言語」や「世代を超えた知識の蓄積(文化進化)」という人間の特異なパラメーターを上乗せすることで成り立っています。