小林秀雄『本居宣長』補記を読んでいると、ソクラテスの問答の話が出てきて、この「問答」にわざわざ「ディアレクチック」とルビがふってある。
しかしながら、dialectic というのは「弁証法」という意味の英語であり、もとの形は dialectica というラテン語であろう。
ギリシャ語では dialectike、dialectos などの形もあるが、プラトンやクセノフォンが記述した「ソクラテスの対話」のことは単に Σωκρατικὸς λόγος (Sokratikos logos) もしくは
Σωκρατικός διάλογος (Sokratikos dialogos) というのである。
ソクラテス法 (socrates method)、dialectic、弁証法というものは、おそらくかなり後の世、ローマ時代に生まれた言葉であろう。
プラトンが「哲学の方法としての問答」と言ったときの「問答」は dialogos、dialogue であったのではないか。
ま、そんなことをうだうだ問題にしたいわけではないが、小林秀雄ですら、ソクラテスのディアレクチックと言ってしまうところに、この、英語と、ラテン語と、ギリシャ語のごちゃごちゃした関係と、その考証のめんどくささがあるというわけだ。
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