千夜一夜物語

実家に「千夜一夜物語」があったので,退屈だったので,
読みふけった.
妻に裏切られたどこぞの王様が,
「貞淑な妻などいない」という観念に因われてしまい,
処女と同衾したあと浮気できないように殺すということを,
毎晩繰り返していたという.
ところが面白い話の続きを聞きたくて千一夜の間ある娘の話を聞いていて,
しまいにはこの娘を許し,正式な妻としたという話.
うーん.つまり「「貞淑な妻などいない」とは言えない」というのが,
結論なのだろうかなぁ.

この娘はシェーラザッドと言うのだが,
千夜一夜物語の特異なところは,
話の中の登場人物がさらに物語をし,さらにその話の登場人物が
さらに物語をし…,という入れ子状態になっているのである.
登場人物が複数の物語をすることもある.あうち.
シェーラザッドをルートとする木構造になっている.
きわめてややこしい.

シンドバッドの冒険なんかもこれの一部なんだろうが,
ディズニーにかかると,清く正しい恋愛物語になっちまうんだな.
これが(見てないから知らんが).
不倫と偏見の物語が勧善懲悪ものに改作されるのだな.
アメリカ映画にありがちのパターン.
「Trust me!」とか言っちゃって.
きゃー恥ずかしい.

これを訳して紹介したイギリス人のバートンという人も,
ずいぶん屈折した人だったのではないかと思う.
当時の,黒人やアラブ人に対する西洋人に固有の偏見というものが
かなり混入してるのではないか?
それとも原作どおりなのだろうか?
これを読んでて「家畜人ヤプー」を思い出した.
おそらく「ヤプー」は千夜一夜物語の影響を受けたものだろう.

ムッソリーニ

「ムッソリーニ」という映画を借りる.
イタリア映画的美しさがある.
しゃべってるのは例によって英語だが.
これ見てると,ムッソリーニって,それほど邪悪な政治家ではない.
と思えてくる.
イタリアという,類まれに自由奔放な国で.
個人主義的な国で.
怠惰で.退廃的で.
政治的にはぐちゃぐちゃで.
そんな国で 1922 年に 39 才で首相になった,ムッソリーニというおっさん.
これだけでも他の独裁者,たとえば,スターリン,
ヒットラーなどとは性格的に違うものになって当然だと思える.

汽車を時間どおりに走らせようとしたり,
密造酒を取り締まったり,
昼寝をやめさせようとしたり.
すっかり堕落した古代ローマ人の末裔を勤勉な民族に変えようと思えば,
多少手荒な手段は必要だっただろう.
でもラテン人をピューリタンのような勤勉な民族に作り変え,
イタリアを第 2 のローマ帝国にしたてあげる,というのは,
もともと無理があったような気はする.

ドイツという,がんらい謹厳実直な気風の国に,
ファシズムが台頭し,
ヒットラーという精神的にいびつな人間が指導者となったのは,
イタリアにとって不幸なことだっただろう.
ヒットラーはムッソリーニにすりよってきた.
ヒットラー政権.ムッソリーニに遅れること 11 年.
ヒットラーはムッソリーニを尊敬していたが,
ムッソリーニはヒットラーを気にいらなかったようだ.
結果的にイタリアはドイツと同盟し,
日本も調子にのって同盟してしまった.
うーむ.なんという不幸だろうか.

豪姫

豪姫という映画を借りて見た.
原作は富士正晴という人だ.
富士正晴なんて誰も知らないと思うが,
伊東静雄関連で知っていた.
で,先にその文庫本を買って読んだのだが,
カバーに宮沢りえ主演で映画化されたということが書いてあったので,
それでその映画の存在をしったのであった.

思ってたよりはずっと良くできた映画だった.
すじがきはかなり原作に忠実で,ごく地味なもので,
なんでこんなもんを映画化したのかと思うくらいで,
まあ宮沢りえの絶頂期だからこそできた冒険のようなもんかもしれん.
でも私はこの映画は好みだなあ.
地味な中に戦国の美しさが現れている.

仲代達也が古田織部の役なんだが,
なんとも恰好良い.
「大地の子」や「秀吉」の仲代達也も良かったが,
この「豪姫」の仲代達也も,実にかっこいい.

第一首相

カンボジアの第一首相とか第二首相というのは,
なんかおかしな呼び名だなあ.と私は思ったのだった.
なぜかというに首相は The prime minister であって,
本来,第一大臣という意味だ.
気になって英字新聞を読んでみたら,
なんのことはない,
The first prime minister, the second prime minister
というのだそうだ.
うむ.事実は小説よりもつまらない.

まあ,どうでもいいことなのだった.
でもきっと一部のラテン系の言語だと,
La prima prima ministro (どこ語?)となって具合が悪いのではないか.
でも,序数の階層化なんて,珍しくもないか.

三茶都議選事情

うちのとなりは今マンションの建設工事中だ.
朝 8 時きっかりにラジオ体操.
そのあと朝礼らしきもの.
それから工事開始でずいぶんやかましい.
それと同時に活動を開始するのが「女性党」だ.

女性党,女性党,世の中はこのままでいいのでしょうか.
私達は立ち上がりました.
やさしくおもいやりのある政治を…

やさしくおもいやりのある政治をやろうってんなら,
朝 8 時から街宣すんなっ!
ぼけ!

青年自由党.
これはなかなか気持ちが悪い.
「私達は日本の歴史を大切にします」
うん,ここまではいい.
「これまで日教組の先生方は,日の丸や君が代を否定してきました」
うん.私も日教組は嫌いだ.
特に高校んときの現代社会の教師が,
授業中に思想教育まがいの蘊蓄たれてんのがすっげーいやだったなあ.
批判の能力も機会もない高校生に一方的に価値観おしつけんなよな!
それはそうと.「親孝行しましょう」

なんだそれは.
親孝行と国の政治をどう結びつけようというのか.
党の旗というかのぼりを,
応援団か何かのように,
腕を垂直に前に出して,直立不動,大事そうにもっているのである.
これはけっこう気持ち悪い.
さらに,拡声機を使わずに,スローガンを叫びながら大勢で
行進してるのである.
うーむ.
どうしてそんな極端に走らなきゃならないかな.

共産党は,支部の一階にシートを敷いて,
近所のおばさんらしい連中がなにやら内職風の作業をしてる.
そういう手作り的というか,家庭的雰囲気を人にみせびらかす必要があるのか.
無理に演出しているようで,かえって不快だ.
共産党は,
自分だけが野党でありつづけることに存在意義を見出しているかのようだ.
それも何かいやだ.

この共産党の支部はうちからすぐそこだが,
ときどき共産党を攻撃する街宣車がきて,
いいたいことをひとしきり大声でしゃべりまくる.
そういうことがときどきある.
これもなあ.
共産党を批判したい気持ちは分かるが,
あまり効果がないような気がする.
かえって同情ひいちゃうんじゃない?

公明党関係の知り合いから電話が来た.
いまは「公明」って言うんだっけ?
新進党との関係はどうなったんだ.
電話で勧誘して,どうしようってんだろう?

日本赤軍の女

昨日週刊アスキーを GET しようと思ったら見当たらない.
もしかして今日発売?
体が週刊誌を読みたい状態になってたので,
仕方なく週刊新潮と週刊文春を買う.
週刊新潮「たかが,されどテレビ」というコラムで,
ある日本娘がテルアビブ空港でテロリスト扱いされたという話.
他の乗客と隔離され,
兵隊のような男に銃を突き付けられたまま連行され,
飛行機でもずっとその兵隊と一緒だったそうだ.
そりゃあ生きた心地もしなかったでしょうね.
なんでも化粧もせずスッピンだったので日本赤軍に間違われたそうな(大爆笑).
久しぶりに笑かせてもらいました.
きっとマニュアルに書いてあるんだな.
こうこうこういうみなりの日本女性は日本赤軍だ.
とか.
男だとサラリーマン風を装った方がいいんのかな.
私も一度シカゴ空港で捕まったことがあって.
エディーマーフィーみたいな顔の警備員に
「domestic airline はどこですか?」と聞いたら,
どうもみなりがみすぼらしすぎたのがいけなかったらしいのだが,
「何日滞在するんだ」
「一週間です」
「荷物が少なすぎる.服はどうする」
「そのうち買います」
とかってしばらく尋問されて,
国際会議の資料などを見せたらようやく信用されたのでした.
私は荷物は最小限にして服は現地調達.
帰りにおみやげ代わりにもって帰る.
という方針なのですね.

しかしこの女性は敬虔なクリスチャンだったそうで.
かわいそうな話ではある.
外国では化粧をしない清楚な日本女性とは思ってくれないんだなぁ.
化粧はどのくらいすればいいかって私の好みでいえば,
口紅とクリームくらいかな.
匂いのきつくない.

今朝の日経では,どうも大使館関係者らしい人が,
イスラエルのオスマントルコ時代の鉄道の跡をいろいろ探して廻ったという
物好きな話が載っていたが,
あちこちでパレスチナ人やイスラエル人に尋問されたという.
物騒な話である.
列車にはマシンガンを持った治安要員が二人乗っていて,
爆弾が仕掛けてないか,床にはいつくばって調べるんだそうだ.
いやはや物騒な国だ.

これは週刊文春の方の記事だが.
役所広司という人は私と同郷,つまり諌早の人らしいのだが,
それはともかく.
「うなぎ」がグランプリを受賞したのは,
フランス人がアメリカ映画を嫌っているからだ,と受賞した監督が言っていた.
ふーん.
まあアメリカ映画は純粋に娯楽だから.
こないだ「ツイスター」見たけど.
なんも考えずに楽しめるわな.
子供の離乳食みたいなもんだ.
この監督はお金をかけた映画というもんは肯定してて,
お金は使わないよりは使った方がいい.
どんどん集めてどんどん使ってどんどん儲けてどんどん作るべきだ.
と言う.
私も,お金のかかる研究は否定しない(笑).

追記: 尋問されたのは、みなりというよりは、ホテルの予約がなかったからだろう。

なぜ豆腐は固まるか?

野田春彦著「生命の起源 改訂版」NHK ブックスというのを読んでいたら,コアセルベートの話のついでに「なぜ豆腐は固まるか?」についてほんの少しだがヒントが書いてあった.つまり蛋白質は水という溶媒に溶け易い.が,塩やアルコールを加えると,蛋白質が水に溶けにくくなり,蛋白質どうしが集まって沈澱することによって豆腐が析出!するのだそうだ.

なるほど.でも,なぜ塩化マグネシウムよりもグルコノδラクトンの方が固まり易いのか?なぜ豆乳を熱するのか?については未だ明らかにされてはいない.さらなる研究を要するとみた.しかし,世の中には蛋白質に詳しい人もいるだろう.蛋白研の人とか.豆腐研究を本職にする人もいるだろう.その人達に聞くのが早いのではないか.まあいいや.

梁塵秘抄

「梁塵秘抄」があったので借りてきて読む.

> 我が子は二十に成りぬらん 博打してこそ歩くなれ 国々の博党に
さすがに子なれば憎か無し 負かいたまふな 王子の住吉西の宮

という歌があり,冒頭の
「我が子は二十に成りぬらん 博打してこそ歩くなれ」
の部分なんて,
不良息子を持った母親の愚痴のようで面白いよなあ.

>
山伏の 腰に付けたる ホラ貝の ちやうと落ち ていと割れ
砕けてものを 思ふころかな

これはなんてふざけた歌だろうか.と思ったら,
実は山伏の失恋の歌なのだそうだ.
ますますふざけてる.

Sword of Gideon

「ギデオン」というのを借りた.
原題は Sword of Gideon.
これは,ミュンヘンのオリンピック村で起きたテロに報復するために,
その 7 人の首謀者に対して,モサドが 5 人の刺客を送る…という話.

ミュンヘンのオリンピック村のテロ事件というところまでは,
少なくとも実話なのだろう.
1 人がその場で射殺され,
11 人が人質になったが,
ドイツ軍の強行突入作戦が失敗し,
11 人全員が手榴弾で爆死するという凄惨な結末になった.
字幕で「スパイ」と訳されているところは英語では
secret agent とか agent of Mossad などと言っていた.

ギデオンといえば,
国際ギデオン協会の聖書が有名だ.
ホテルにもよく置いてあるし,
私が学部生のころは大学でときどきただで配っていた.
ちょっと気になったので調べてみたら,
ギデオンというのは士師記に出て来る人で,
イスラエル人がミデアン人に支配されていたときに
現れた預言者(指導者)とのこと.
ミデアン人はイスラエル人に征服され,そののち再起することができず,
またギデオンが生きている 40 年間イスラエルでは平和が続いたそうだ.

さて,ギデオンには 70 人の子供がいたが,
そのうちの一人のアビメレクという人が,
自分の兄弟を皆殺しにして王になった.
ただしヨタムという人だけが逃げて助かり,アビメレクを呪った.
しばらくしてアビメレクは彼を王に立てた民と不仲になり,
その民を攻めている途中に,
ひとりの女が落した石臼に頭蓋骨を砕かれて死んだそうだ.
ふーん.